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高音質だから音が良いのではない。
SACDやハイレゾ音源は、オーディオ・スペックの要素からすると高音質であることは間違いありません。
実際のSACDやハイレゾ音源の音を聴いても、音場の広さ、音の滑らかさ、音の美しさ、歪の少なさなど高音質だと思います。
高音質といわれれば、音が良いということを意味するのですが、高音質と音が良いということを別々に考えなければオーディオというものが理解できなくなると思います。
『高音質だから音が良いのではない』というと、言葉的に矛盾しているので理解しにくいことかもしれません。
これは音楽の表現の上で高音質であることが重要だと考えています。
つまりリアリティのある音で高音質が必要だと思います。
仮想的な音を求めるのであれば、SACDやハイレゾ音源は最高といえます。
しかし、実際の音と間違えるくらいのリアリティのある音質を求めると、SACDやハイレゾ音源の音は、現在のところ最高とはいえません。
どちらの音を好むかでハイレゾ音源に魅力を感じ、あまり魅力を感じることができない人がでてしまいます。
私は、実際の音と間違えるくらいのリアリティのある音質こそが、本質的な意味で高音質と考えています。
高音質とリアルな音は異なる
高音質というものをひとくくりとして考えてしまうと、恐らく何が高音質であるか理解できなくなると思います。
高音質をひとくくりとして考えるとシンセサイザーで製作した音も生のアコースティックピアノやバイオリンを録音した音も同じになってしまいます。
高音質を考えると生のアコースティックピアノやバイオリンの音と録音して再生された音を比べリアリティのある音を追求していく必要があると思います。
SACDやハイレゾ音源の音の基準の問題
ハイレゾ音源が高音質と規定するには、必ず基準となる音が必要になると思います。
例えば、カセットテープであればオープンリールやアナログレコード、CDであればプロ用オープンリール音源の音が基準になります。
この基準とした音より、どれくらい再現性が高いかが高音質の目安になると考えられます。
アナログレコードやCDなら『ダウンサイジング』、元のスペックを落としていく方法で調整することが可能でしたが、ハイレゾ音源では、すでに最高のスペックを誇っているので基本的にアナログレコードやCDような『ダウンサイジング』を利用することはできません。
つまりハイレゾ音源はスペック的には最高の性能ということになるので、実質的に基準となる音が存在しないことになります。
しかし、ハイレゾ音源を高音質と謳うには、必ず基準となる音を想定する必要があります。
ハイレゾ音源に高音質を求めるとき、何を基準にして高音質とするかが大変重要な課題だと思います。
この基準の問題は、たいへん難しい問題でありますが重要なことです。
それがなければハイレゾ音源の謳われる高音質そのものが不可解なものになってしまうからです。
SACDやハイレゾ音源の音を高音質とするとき、その元になる基準とする音源の音質が非常に重要になってきます。
もし、SACDやハイレゾ音源の元に基準になるものが、CDなどのディジタルメディアであれば、高音質は何か?ということに永久の迷宮には入ってしまう可能性があります。
現在のSACDやハイレゾ音源は、音の迷宮に入りこんでいるように思います。
SACDやハイレゾ音源の課題
SACDやハイレゾ音源の今後の課題は、仮想的な高音質の追求ではなく、実際の音と間違えるくらいのリアリティのある音を求めていく必要があると思います。
実際の音と間違えるくらいのリアリティのある音を追求するには、高音質となる基準となる音を考え直す必要がでてきていると思います。 SACDやハイレゾ音源の音の基準となるものが、新しいアナログ音源などが必要になってきていると考えます。
リアリティのある音は、アーティストにとっては、相当な実力を必要としないと良い録音ができなくなるので、たいへん辛いことになるかもしれませんが、芸術という作品を永久に残すことができるようになります。
おわり