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アナログの音の魅力
アナログの本来もっている音の魅力は、アナログ音源の特有の柔らかくて暖かい滑らかな音質では決してありません。
アナログの音の魅力を感じるのは、アナログが鮮度のあるリアルを再現するからです。
鮮度のあるリアルな音とは、実際の音と間違えるような音のことをいい、音楽が人工的な空間から美しく滑らかな音で流れるのではなく、実際のその場で演奏しているように勘違いするぐらいの音です。
音が硬いところは硬く、やわらかいところはやわらかく表現することが、アナログ的なリアルな再生だと考えます。
歌手の声、楽器の演奏が目の前に実際にその場で歌ったり演奏しているように想像させてくれるような音です。
美しい空間から、やわらかく美しく広がった声が流れることやややわらかくなめらかな楽器の演奏が重厚に聴こえることがリアルな音ではありません。
これらは良い音といえるかもしれませんが、リアルといえる音ではありません。
なぜならば自然界の音は、なめらかで柔らかい音だけで構成されているのではなく、突き刺さるようなきつい音の存在しているからです。
それらの両方が再現し再生することが、初めてリアルな音というものです。
片方のなめらかで柔らかい音だけを重視すると、耳あたりの良い奇麗な音が再現できますが、実際の自然界のリアルな音とはかけ離れ、どこか音が人工的な感じがします。
これは、低音の量も同じことで、多すぎれば低音の量感は大きくなり迫力はましていきますが、自然な感じの音から離れていきます。
アナログの音が魅力を感じるのは、再生される音が自然に聴こえるというところにあります。
その音の自然さが、リアルに聴こえアナログというものの魅力になっていると思います。
良い音で録音されたアナログ音源は、歌手の声が硬くも柔らかくも変化し声が太くも細くも再現されます。
だからアナログで歌手の声が柔らかく重厚に再現されると、歌手が最高のものを表現したときの歌の上手を感じることができ芸術というものに感動できるのです。
最近のCDの音のようにすべてが音が、柔らかく重厚さだけを再現される音では、歌手の歌の上手さや最高の芸術に感動することができなくなってしまいます。
実際のような音の自然さ再現しないようなリアルでない音では、アナログマスターテープを忠実に再現したとはいえません。
リアルで自然な音にこそ、アナログの最大の魅力です。
SACDやハイレゾ音源というような高スペックの製品が多くあるにもかかわらず、一部のオーディオファンが今では骨董品といわれてもしかたがないアナログレコードの音を求め続けている理由が理解できるのではないかと思います。
この問題は現在のオーディオで大変重要なテーマだと思いますので、何れ
『高音質とリアルは異なる』
というようなテーマで掲載していきたいと考えています。
アナログマスターテープを忠実に再現できなくなった理由
アナログマスターテープを忠実に再現できなくなった理由は、メーカーの技術者の若返りによりアナログの音を知らない人が多くなってしまったのか?アナログの本質的な良い音を知っている技術者がいなくなったか?どちらかが考えられます。
また、新しいハイスペックのメディアやハイスペックの録音方式の数値的な性能の良さばかり重視したために、実際にアナログの音を実際のスピーカーで再生し視聴してアナログの音の良い部分とは何かを真剣に研究しなかったからだと思います。
オーディオファンや及びいろいろな人の意見を真剣に受け入れ、アナログの音を魅力を調査していれば、もっとアナログマスターテープを忠実に再現したCDを発売できたのではないかと思います。
昔のアナログ音源にイコライジングやノイズリダクションが施される理由
昔のアナログ音源にイコライジングやノイズリダクションが施される理由は、現在のオーディオファン、オーディオ・メーカー、アーティストがやわらかく重厚で耳あたりの良い奇麗な音を望んでいるということが原因になっているように思います。
最近発売されるCDのほとんどが、美しくやわらかく耳あたりの良い音です。
CDを製作するメーカーや作品を制作するアーティストや製作エンジニアが望んでいる音とオーディオファンが望んでるやわらかく奇麗な音が総合して現在のオーディオの音になっているものだと思います。
アーティスト側からするとディジタルの登場により製作技術がアップしたことで、実力以上に作品に表現できるようになり、特に歌手では昔のように声量が必要としなくなり、声量がなくてもレコーディングでは簡単に重厚でやわらかく美しい声が実現できるようになりました。
このような現在流行の重厚でやわらかく美しい音は、製作者側、リスナー側が好んでいるものだと思います。それゆえにCDを製作するメーカーは、昔のアナログ音源を新たにリマスターする時に、昔のアナログの音を忠実に再現するのではなく、現在の流行の求められる重厚でやわらかく美しく耳あたりの良い音に作りかえるように努力しているものだと考えられます。
昔のアナログ音源を、現在のディジタル録音で制作された作品と同じような感じの音になるように、イコライジングやノイズリダクションを利用してリマスターしているものだと思います。
ディジタル変換やリマスターすにおける性能が向上したから、重厚でやわらかく美しく耳あたりの良い音が実現できるようになったのではなく、故意にそのような音質になるように製作されているものだと考えられます。
これらは、昔のアナログ音源で新しく発売されるリマスターCDやハイレゾ音源を視聴すると、現在風の音質になっていることで確認できると思います。
新しくリマスターして発売されたCDの音は、間違いなく上品で音質が良いといえますが、音の鮮度が下がっているように感じられます。何度も申してきたことですが、
『重厚で滑らかで奇麗な音』
アナログの良い音ではありません。
鮮度の高いリアルで自然な音こそが、本物の良いアナログの音だと思います。