File No.056-4 優秀なスピーカーメーカーだったY社の新しいスピーカーについて考える(4) -スピーカー-

NS-5000が、かつてのNS-1000シリーズを継承していないことについて解説しています。

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File No.56 / 04

NS-5000は、かつてのNS-1000シリーズを継承していない

NS-5000の音を視聴した感じからNS-5000が、かつてのNS-1000シリーズを継承しているとは到底思うことができませでした。

NS-1000シリーズがハードドームの密閉型スピーカーに対してNS-5000が、ソフトドームのリアにポートがあるバスレフスピーカーなので設計思想も全く異なるように思います。

NS-5000とNS1000Mのカットモデルの写真
NS-5000とNS1000Mのカットモデル

恐らくNS-5000の設計・製作に関与した技術者たちの中に、かつてのNS-1000シリーズを設計・製作した技術者は1人もいないのではないかと思います。

NS-5000から、かつてのNS-1000シリーズの足跡が全く見ることができません。

NS-1000シリーズの中高音のユニットにはベリリウムを使用したドーム型ツィーターとスコーカーが採用されていました。

ベリリウムは、音速が早くスピーカーの中高音ユニットとして良い特性を持った素材です。

NS-1000シリーズのベリリウムを使用したドーム型ツイーターは、Y社の高級スピーカーの伝統といえるものだったと思います。

ベリリウム自体の毒性が強く、スピーカーに使用することを控えることも考えられないこともありませんが、スピーカーのユニットをわざわざ口にする人もいないので、ベリリウムの毒性のために中高音ユニットにベリリウムを使用しないとも思えません。

NS-5000とNS-1000Mのツィーターとミッドレンジ・ユニットの写真
NS-5000とNS-1000Mのツィーターとミッドレンジ

NS-1000シリーズの名称を継いでいる新しいNS-5000に、Y社の高級スピーカーの伝統のベリリウム中高音ユニットが採用されていないことが不思議なくらいです。

オーディオ的に見て、決してNS-1000シリーズのベリリウムの音色が否定された訳ではありません。

ベリリウムは、音速や音色からしても中高音ユニットに最適な素材の一つだと思います。

Y社の新しく発売されたスピーカーがNS-5000と名称しているのににベリリウムのユニットを使用しなかった理由が理解できません。

また、新しいNS-5000にはY社の高級スピーカーの伝統のベリリウム中高音ユニット以外に、NS-2000から採用されたピュアカーボンファイバーコーン仕様のウーハーユニットも採用されていません。

ピュアカーボンファイバーコーン仕様のウーハーユニットは、解像度の高いクリアーで明快な低音を再生するユニットとして、多くのオーディオファンから評価されていた低音ユニットだったと思います。

NS-5000とNSX-10000のウーファーユニットの写真
NS-5000とNSX-10000のウーファー

ピュアカーボンファイバーコーン仕様の優れた低音ユニットも、新しく登場したNS-5000には採用されなかったことも疑問です。

そして、かつて発売されたNS-1000、NS-1000M、NS-2000、NS-1000X、NSX-10000のスピーカー全てが密閉型のスピーカーだったのが、新しく登場したNS-5000にバスレフ型でした。

NS-5000とNS-1000シリーズとは、内容的にあまりにも相違があるので、NS-1000シリーズのスピーカーの製作の技術的なノウハウを全て否定しているようにも見えてしまいます。

NS-5000がスピーカーとしての先進性は認めるものの、優秀なスピーカーであったNS-1000シリーズの製作ノウハウや技術的に継承した部分は、ほとんどないといっても過言でもないと思います。

これは私の憶測になりますが、Y社は20年前にNS-1000シリーズの生産を打ち切ってから、ベリリウムのユニットやピュアカーボンファイバーコーンの低音ユニットを製造できる設備や関係工場の設備を全てを処分してしまったのではないかと思います。

新しいNS-5000に製作にあたり、優秀なNS-1000シリーズの長い研究・開発の末に得たスピーカー製造の技術的なノウハウを引き継ぎたくても引き継ぎたくても引き継ぐものがなかったのではないかと考えられます。

そして、NSX-10000を開発した当事の技術者も、既にY社には一人もいなかったように思われます。

どのようにY社の新しく発売されたNS-5000のスピーカーを検証しても、NS-1000シリーズのスピーカーの影すら見つけることができません。

このことは、NS-5000の音・音質・音色からの判断できると思います。

新しく登場したスピーカーのNS-5000が、Y社の技術者が長い間の研究によって開発された優秀なスピーカーのNS-1000シリーズを全く引き継いでいないことは大変残念なことだと思います。

Y社のNS-1000Mについて

Y社のスピーカーを語るにあたり、NS-1000Mというスピーカーをを語らないわけにはいかないといます。

それぐらいY社のNS-1000Mは、日本のスピーカー製作に影響を与えたスピーカーといえます。

1970年から1980年代のオーディオを知ってい多くのオーディオファンにとって、Y社のスピーカーNS-1000Mは、国産スピーカーの中で賛否はあるものの名器中の名器だといえます。

YAMAHA NS-1000の写真
YAMAHA NS-1000

Y社からNS-1000Mが最初の1974年から1997年までの23年という長期間にわたり販売されていたことを考えると、NS-1000Mというスピーカーが、当事のオーディオファンにどれだけあこがれたスピーカーかが伺われます。

現在でもNS-1000Mは、オーディオの中古市場で人気があり多くのオーディオファンに注目されるスピーカーの一つです。

なぜ、それほどY社の昔に発売されたスピーカーのNS-1000Mが、オーディオファンに愛され人気があったのか考えてみたいと思います。

NS-1000Mは、3ウェイ・3スピーカー・密閉方式のブックシェルフ型で1970年という時代に世界に先駆けてハイテク素材のベリリウムを使用したハードドーム型ツィーターとハードドーム型スコーカーを登場させ、スピーカーに新しい風を吹きつけました。

現在であればベリリウムを使用したハードドームツィーターとスコーカーなど珍しいものではないかも知れませんが、1970年のスピーカーからすればスピーカーにベリリウムを使用することはたいへんな先進性があったと思います。

ベリリウムを使用したハードドームツィーターとスコーカーは、音速が早く音が明瞭で解像度の高いのが特徴で、魅力のある素材です。

NS-1000Mのベリリウムのハードドームスコーカーの中高域の解像度の高さは、当時のブックシェルフ型スピーカーのレベルからして革新的な出来事でした。

NS-1000Mは、これまでの多くのブックシェルフ型のソフトドームやコーンスピーカーの耳当たりの良い中高音ではなく、ベリリウムのハードドームツィーターとスコーカーによるクリアーで明快な解像度の高い中高音を実現したスピーカーでした。

NS-1000Mの登場は、これまでのソフトホーム型のブックシェルフ型スピーカーの音に慣れ親しんでたオーディオファンを戸惑ませることもありましたが、直ぐにNS-1000Mの先進性が認められ、多くのオーディオファンにNS-1000Mの音の良さを理解されて高い評価を得ることになりました。

密閉型スピーカーのNS-1000Mは、中高域の解像度だけでなく高音から低音までのバランスが良く、優れたブックシェルフ型スピーカーの一つとして君臨することになりました。

NS-1000Mと同時にNS-1000という数字の最後にMがつかないスピーカーも発売されており、NS-1000は、エンクロージャーが黒檀仕上げになっているという現在では考えられない大変贅沢なスピーカーでした。

NS-1000Mと比べると黒檀仕上げのNS-1000は、エンクロージャーが一回り大きい仕様で重量が40kgと5kg上回っています。

黒檀仕上げになっているのNS-1000の写真
大変贅沢な黒檀仕上げのNS-1000

このNS-1000はNS-1000Mより、かなり価格も高かったこともあり、NS-1000Mとユニットの構成が同じだったので普及型のNS-1000Mの方が遥かに多く販売され、NS-1000よりNS-1000Mの方がメージャーになっています。 (NS-1000は、バッフルに黒檀を使用しているので、NS-1000Mとは音が若干異なる可能性があります。)

YAMAHA NS-1000MとNS-1000写真
NS-1000MとNS-1000

Y社のNS-1000Mスピーカーの優秀さは、海外にも認められてスウェーデン国営放送やフィンランド国営放送でモニタースピーカーとして使用されました。

スウェーデン国営放送で活躍するNS-1000Mの写真
スウェーデン国営放送で活躍するNS-1000M

NS-1000Mが海外の国営放送のモニタースピーカーに選べれたこともあり、高級スピーカーでNS-1000Mのスピーカーは、本当に良く売れました。

NS-1000Mは、一般の市販の高級スピーカーですが、普及の価格帯スピーカーが海外国営放送のモニタースピーカーとして使用されたことは日本のスピーカーとして、大変な栄光なことだと思います。

Y社のNS-1000Mが登場したことで日本の他の高級スピーカー製造メーカーにも大きな刺激になり、国産高級スピーカーのハイテク素材を使用するハードドームスコーカー時代の幕開けになり、1980年代の国産スピーカーのほとんどの製品が各自のハイテク素材を利用したハードドームスコーカーを採用するようになりました。

Y社のNS-1000Mは、日本の各オーディオメーカーへのスピーカー製作の発展への貢献は計り知れないものがあります。

1980年代にNS-1000Mは、大きく変更され後継機が登場した。  つづく


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