File No.72-2 オーディオが最も楽しいときは、発展途上のとき(2) -コラム-

便利さは、楽しみを失わせることについて解説しています。

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便利さは、楽しみを失わせる

よく考えて欲しいことですが、もし何の苦労もせずに素晴らしい音楽が聞けるようになると、最初の内は素晴らしいと思うでしょう。

しかし何の苦労もなく簡単に良い音で音楽が手に入るようになると、それが当たり前になってしまい、音楽で感動することを失わせてしまっているように思います。

どうして簡単に高音質の音楽が、手に入ることに何の不満であるのか?と疑問に思うのでないでしょうか。

アーティストの製作する音楽とオーディオ機器は、音楽の感動とは関係ないと考えられるかも知れません。

確かに音楽とオーディオ機器は、直接は関係ないでしょう。

アーティストたちが一生懸命製作した音楽を簡単に聞けるという恩威というものは素晴らしいものだと思いますが、アーティストの苦労に対して、こちら側から簡単に高音質の音楽を得ることは本当にアーティストたちにとって良いことなのだろうかと考えさせられます。

それは簡単に入手できるものは、大切にしなく、直ぐに飽きられてしまうからです。

『もし車や家が簡単に入手できるとしたら、本当に大切にするだろうか?』

『100円ショップで買った製品を丁寧に使用して、少しでも長持ちさせようとするだろか?』

『100円で買った物は、少し汚れたら捨ててしまわないだろうか?』

人は、簡単に入手できたものに愛情を感じることができないようになっているように思います。

安易に手に入れれるものは、それがアーティストたちが苦労をして製作した大切な芸術作品であったとしても、粗末に扱ってしまうようになりかねません。

以前のようにレコードショップに行って、レコードを購入するような手間は、一見不合理に見えますが、その苦労がより一層、アーティストの製作した音楽に深い興味をもたらすものだと思います。

わざわざレコードショップに行って、棚から好きなアーティストのレコードを探し出して購入する行為は、お金だけでなく時間も多く消費してしまいます。

アーティストの音楽を聞くためだけの行動としては大変時間の無駄とも考えられるかも知れませんが、自身がアーティストの音楽を聞くために多くの時間を消費したことは、自身の思い出にもなり、それがアーティストに対しての音楽の思い入れにもなってきます。

また、レコードショップの店内の雰囲気、レコードショップに行くまでの景色など空間の全てがアーティストへの想いの一部として記憶として定着することでしょう。

そこで得たレコードは、長い間に渡って大切にし、時の経過によって流行が廃れてしまったとしても、また取り出して聞き直したり、購入した時のことを考えたりして、昔の思い出にふける楽しみにもなっていきます。

それに対してインターネットでダウンロードした音楽は、いつごろダウンロードしたのかなど直ぐに忘れてしまい、音楽を購入した時の思い出など全くなく、流行らなくなればポイ捨てされてしまう運命をたどります。

インターネットで音楽をダウンロードすることは、大変便利なのですが、いつの間にか流行を追う行動をばかりするようになっていることだと思います。

そのような状況から、音楽に心から感動したり、深く探求したりすることは失われつつあることでしょう。

大変贅沢なことといえるかも知れませんが、簡単便利さゆえに、音楽の中にある本質的な楽しみやオーディオの楽しみそのものまでも、失わせてしまっているように感じられます。

皮肉にも、便利になればなるほど本来、持っていた楽しみを失わせてしまうのかも知れません。

便利さは、音楽芸術を製作するアーティストにとって本当の得策だろうか? つづく


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