File No.72 / 01
オーディオが最も楽しいとき
オーディオやビデオがディジタル化されてから、既に成熟期に来ているので、現在では簡単に高音質、高画質が手に入る時代になりました。
安価なオーディオ機器でも、ノイズのない高音質が簡単に手に入る時代になったともいえます。
ビデオレコーダーもしかりです。
確かに高価なオーディオ機器やビデオ機器は、安価なものよりも高音質、高画質であるのは間違いないと思いますが、アナログ時代やディジタル初期の時代よりも、高価な製品と安価な製品との音質や画質の差が少ないと思います。
ディジタル・オーディオ、ビデオ機器をパソコンで考えると、パソコンではWindows95が登場した時代では、各コンピュータの性能によって、処理スピードの差を大きく感じることができ、高価な製品の良さを感覚的に実感することが出来ました。
またWindows95の時代では高価なパソコンでなくても、マザーボードのバイオスの設定をいじることでCPUのクロックアップをすることで、処理スピードが速くなることを喜んだものです。
しかし現在、普通にパソコンを使う用途では、スピードによるストレスを感じることはなく、どのパソコンを購入しても十分に使える時代になりました。
現在は、動画を編集するなどというような目的がある時や特別な仕事の為に高スペックのパソコンが必要なときにしか、ほとんど高価なパソコンを購入する意味はなくなっています。
そのようなことが、オーディオ機器やビデオ機器でもいえます。
今でも、確かに高価なオーディオ機器やビデオ機器というものに魅力を感じることは感じるのですが、CDが登場した初期の時代やVHSビデオで録画していた時代に比べ、性能的な優越を得にくいので高価な製品をどうしても欲しいという気持ちが薄く感じてしまいます。
どう説明して良いか、少し説明に詰まりますが、アナログ時代やCDが登場した初期の時代では、憧れるような高価な製品が多く存在したものです。

この製品だったら、『どんなに音が良いだろう』とワクワクしながらカタログを眺めたり、オーディオ雑誌やビデオ雑誌の記事を読みながら、よく頭の中で想像したりして楽しんだものです。
オーディオやビデオが、『明らかに音が悪い』や『画質が悪い』といえる製品が存在した発展途上の時代だからこそ、だんだんと良くなっていくことに喜びを感じ、いつか高級品を手にいれたいと言う気持ちを持っていました。
何かを求めるとき、それが成熟段階ではなく、発展途上段階の時が、様々なアイデアが登場して最も楽しい時だと思います。
現在のディジタルは、音や映像についてまだ発展途上だと思いますが、人が認識する上では、ほぼ成熟段階にきているように感じられます。
例えば、SACD以上の音質確保する為に、SACD以上の再生高域周波数を伸ばしても、音が良くなったと感じられることは、ほとんど無いだろうと思います。
また映像では、現在の方式で8Kテレビから16Kテレビにスペックを向上させても、それが擬似的に16Kに見せかけるような方法では、根本的な画質の向上は出来ないでしょう。
現在のディジタルの方式で、サンプリング周波数や量子化ビットを上げても、より音質や画質を向上させることは難しいと考えられます。
サンプリング周波数や量子化ビットを上げると理論上では、音質や画質は向上しますが、動作スピードの向上が必要になる故に他の問題が多く発生し実質的に向上させることは難しいように思われます。
オーディオでも、ビデオやテレビでも、現在のディジタルの方式の延長線上では、感覚的に以前より断然向上しているような認識をすることが出来ないと考えられるので、スペックが向上したとしても、それほど魅力を感じることはないでしょう。
今までのディジタルの方法では、画期的な音質や画質の向上は難しいものだと思われます。
記録メディアの容量を上げて、非圧縮で連続した動画を記録する方式を考え出したなら、またビデオに注目される時がくるかも知れません。
オーディオでもビデオでも、成熟して音質や画質の差が出にくい時よりも、発展途上の音質や画質が感覚的に向上していることが体感できるときが、最も楽しいときだと言えると思います。