File No.71-2 オーディオの満足と感動は、合理性の外にあるのかも知れない(2) -コラム-

インターネットから簡単に得られる音楽の物足りなさについて考えることについて解説しています。

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インターネットから簡単に得られる音楽の物足りなさについて

現在のようなインターネットから簡単に高音質の音楽が得られるようになっても、何か物足りなさがあることについて考えていきたいと思います。

その物足りない感覚の原因とは

『音質?』

『違いますね。』

音質は、現在、昔のように音楽とは関係ないノイズで悩まされることなど皆無で、どの音源をダウンロードしても高音質で音楽が再生できます。

無料の動画サイトなどの音源であったとしても、CDのようなクオリティではないかも知れませんが、昔のFM放送ぐらいの音をノイズのないクリアーな音で十分楽しめます。

音質が良くないからという理由で、ネット音楽に満足できないとはいえないでしょう。

ネット音楽の音質について、細かいことをいうとパッケージメディアの方が音質が良く、高級CDプレーヤーの音質が方が良いというのは間違いないことだと思いますが、今回、そのことについては考えないことにしています。

インターネットからダウンロードした音楽の音質が悪いというのではないので、音質からでは物足りなさについての理由にはなりません。

以前と比べ簡単に高音質の音楽が手に入るようになった大変恵まれた環境がある現在に物足りなさを感じるのは音質以外の理由があるようです。

音楽に満足する為の不思議な感覚

昔は、駅前には、ほとんど何処にでもレコード屋(レコードショップ)がありました。

しかし、地元のレコード店では、自身が求める音楽ものが全て揃うことはないので、わざわざ電車に乗って繁華街のレコード店まで足を運ぶことになります。

大体、学生の場合は、定期券を持っているので、遠くの大学に通う場合など、途中下車してレコードを探しに行ったりしたものです。

廃盤になったレコードを見つけたら、嬉しくなり購入して帰ったりしたのも、今では大学時代の思い出の一部となっています。

サラリーマンになってからは、休みの日にわざわざ電器屋街にまで行き、貴重盤やレアなレコードを探しにマニアックな輸入盤レコードショップに行ってレコードを物色したり、レコードマップ片手にいろいろな中古レコードショップを探したりして、様々なレコードを物色しました。

目的のレコードが無くても、知らないレコードを見て、そんなレコードが存在したのかと思い、そのレコードに興味がでてきます。

レア・レコードの写真
レア・レコードの写真

輸入盤ならジャケットの違いやレーベル違い、レコードカラーの違いなどを見ながら楽しみ、限定盤なら何枚ぐらい存在するのだろうか?と想像したりします。

そこで、知らないレコードを見つけたとき、そのレコードを購入するかどうかを悩みます。

なかなか結論がつかない時は、近くの喫茶店によって、コーヒーを飲みながら一服しながら、さっきのレコード店で見つけた知らないレコードを買うかどうかを悩みながら考えます。

ゆっくりとコーヒーを飲み一服しながら、知らないレコードを買うかどうかを考えるつもりなのですが、頭が知らないレコードのことでいっぱいで、コーヒーの味を味わう余裕などありません。

実は、買うかどうかを迷っているということは、ほとんど購入するという決心はしているのですが、購入しない理由を探しているのです。

『あのレコードは、何処でもあるものだ!』や『そんなに価値があるものではない!』と言う感じです。

そして、迷いながらも今購入しないとなくなるかも知れないということが頭によぎり、意を決して、購入することを決心して店を出ます。

急ぎ足でもう一度、新しく見つけた知らないレコードを購入するために、さっきのレコードショップに向かって進みます。

レコードショップに到着して、一目散にレコードのあった場所に行きます。

おや!、そこに飾ってあったレコードが、見当たらないでは無いですか?

お店の人に、『さっきそこに飾っていたレコードは、何処にありますか?』と尋ねます。

『さっき来た人が買って帰りましたよ!』とあっさりした返答が返ってきます。

しまった、さっき来た時に購入していれば良かったと後悔します。

お店の人に、『また入荷しますか?』と尋ねると、『一点物だったので、次回入荷するのは未定ですね』と返答を貰います。

少し欲しかったレコードが、売り切れてしまうと凄く欲しくなり、空しいながらもお店の人が答えようが無いのを知っていて『何とかなりませんか!』と尋ねてみます。

お店の人は、『ううん・・・次回入荷するかも知れないし、しないかも知れないですね』と分かりきった答えが返ってきます。

今度、『絶対買うので、見かけたら仕入れておいてください!』とお店の人に伝えます。

お店の人から、『勿論、見かければ、仕入れておきますが、はたしてどうなりますかね』という、実に頼りない返事を頂くことになります。

そのような会話を交わした後に、お店に通うようになれば、だんだんとお店の人と顔見知りになり親しくなって、いろいろな話をするようになっていきます。

音楽に詳しいレコード好きのお店の人だったら、いろいろなレコードについての情報をくれたりして、自分の好きそうなレコードが入荷すれば教えてくれるようになるでしょう。

家に帰ってから、何であの時、買わなかったのかと後悔しながら食事して寝ます。

数週間してから、どうしても前に見かけたレコードのことが気になり、少し仲良くなった店員がいるレコードショップに出向きます。

お店で、いつもどうりレコードを物色していると、お店の人が寄ってきて、私に『お客さん、この前、お客さんが探しているレコードが奇跡的に入荷しましたよ!』と声をかけてくれます。

私、『本当ですか?それは何処に置いてありますか?』

お店の人 『この前、絶対欲しいと言われていましたので、一応、お客さんが来るまでは取り置きしておこうと思っていましたので取り置きしています。今から、お見せいたします。』

自分の為に店頭に出さなく、わざわざ取り置きしていてくれたことに少し嬉しく感じてしまいました。

そこで、レコードを見せてもらいチェックしてから、購入させてもらいます。

私、お店の人に『本当に探してたんだ!ありがとう』とお礼を言います。

何度も通って、さまざななレコードを買っている内に、お店の人が私の好きそうなもので、珍しいものなどを教えてくれたり、取り置きしておいてくれたりします。

もっと店員と話せるようになると、ほとんどお店の人と友人関係のようになり、私の好みや中古の製品なら自分が求めるコンディションなども把握してくれて、取り置きしておいてくれたり有益な情報を教えてくれます。

やっと、手にいれた待望のレコードを持って家に帰ります。

家に帰ってから、少し興奮気味にレコードをかけます。

その時、聴いた音楽は、不思議なことに何故か非常に良く感じられるのです。

何とか、このレコードを入手できたことに喜び、改めてお店の人に感謝します。

音楽を聴くのに、たった一枚のアナログレコードを求めていく過程には様々なドラマが存在し、入手した音楽をより深く感動させることができるのです。

また、苦労して音楽を手に入れるようになると、好きなアーティストの芸術の世界をより深く求めるようになり、一つの音楽を長い間、愛し続けることができ、楽しめるようになります。

昔に録音された音楽を、今でも新鮮に楽しめるのは、苦労して手に入れた音楽だったというのも、一理あるかも知れません。

現在のように音楽を高音質で簡単に入手できるようになってくると、音楽芸術という掛け替えのない価値のあるものにもかかわらず、何処か音楽を粗末に扱うようになってしまい、直ぐに次の流行曲へと流れていってしまいます。

音楽の質にもよりますが、大変気に入っていた曲でも、流行が終わると全く聴かなくなり、その音楽を製作したアーティストまでも忘れてしまいます。 (完全に忘れるという意味ではありません。流行が過ぎると全くその音楽に見向きもしなくなるという意味です。)

上記のお話のように、かつては良い音楽をより良い音質で聞くために多くの時間と様々な苦労を伴ないました。

勿論、良いオーディオ装置などの選定も大切な要素の一部であることは言うまでもないでしょう。

良い音楽を求めて多くの時間と様々な苦労を伴なって得た音楽は、その音楽に対してより一層深い楽しみと感動が得られるものだと思います。

ネット音楽のように簡単に手に入れられる物は、飽きるのも早く、次ぎつきと新しい物ばかり求め、結局、刺激以外、何も残らなかったことになりかねません。

苦労して得た先にこそ、最高の満足を得られるということが言えるのではないでしょうか。

これは、音楽をより満足する為の不思議な感覚だと言えるかも知れません。

レコードショップの写真
レコードショップ

★補足

以前は、ほとんどの駅前にはレコード屋というものが存在したのですが、1990年頃から少しずつ無くなっていき、最近ではレコード屋という存在が珍しい存在となっています。

時代だから仕方が無いと思われるかも知れませんが、音楽を楽しむ上で楽しみの一つが無くなってしまった感じで残念でなりません。

データ転送では 音楽の本当の楽しみを得ることはできない つづく


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