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データ転送では 音楽の本当の楽しみを得ることはできない
音楽を楽しむ方法は、生演奏と記録されたものを再生する方法があります。
生演奏は、アーティストの演奏をダイレクトに楽しめますが、記録された音楽はオーディオ機器を通して再生して楽しむことになります。
音楽を楽しむという観点では、生演奏に関しては機器の発達によりホールの集客力が上がったことなどありますが、基本的に昔から変わっていないといえるので、ここでは扱いません。
ここでは、記録されたものを再生する音楽の楽しみについての感じ方について考えたいと思います。
現在では、ディジタル・データ転送技術が発達したことでインターネットを通じて、いつ何処でも簡単に音楽を楽しめるようになっています。
ディジタル・データ転送による音楽は、大変便利でいつ何処でも音楽を楽しめるのが特徴です。
インターネットからの音楽配信によって音楽を楽しむことは、主流になりつつあり、売上げ的にも他の方法を圧倒している様子です。
一方、昔ながらのパッケージメディアを利用して音楽を楽しむ方法は、減少しつつあります。
インターネットからの音楽配信は、パッケージメディアを利用して音楽を楽しむ方法よりも遥かに便利で簡単な方法だといえるでしょう。
インターネットからの音楽配信の音質も問題になることは、ほとんどありません。
しかし、音楽を楽しむことに違いはないのですが、いつでも何処でも音楽が簡単に聴けることによって、音楽をより良い音で聴きたいという感覚が薄くなりつつあります。
なぜなら音楽を入手する行為にアクションがほとんど必要なく、携帯電話から好きな音楽を選ぶだけだからです。
非常に簡単便利さ故に、音楽を聴くということを浅い行動にしてしまいかねません。
インターネットからは、無数の数え切れない数の様々なジャンルの音楽が、簡単に手に入いれることができるので、次々と良い音楽を求めるようになっていくようになります。
その便利さが、返って1つの音楽を大切にすることを忘れ、音楽のより深い世界に入れなくしているように感じられます。
パッケージメディアでは、音楽を聴くまでには、最低限、購入あるいはレンタルしてプレーヤーにセットするという行動が伴ないます。
そのような行動する時にジャケットやレーベルを見たりして、音楽を聴くことの一部分として存在し、記憶として定着していきます。
音楽を聴くこと以外にあり音楽を得る為の様々な行動が、その音楽をより深く愛するようになるのです。
そこには、ネットから転送されたディジタル・データの音楽には決してない世界が存在し、音楽をより深く求め、音楽をより好きになっていくものだと確信しています。
簡単にデータ転送によって実現する音楽環境は、一見、便利で素晴らしいものに見えますが、そこには音楽を聴くという行為自体、単調になりかねなく、本当の意味での楽しさや満足さは得にくいように思われます。
人はデータからでは、本当の楽しみや満足が得れないものだと思います。
ここではデータの定義をディジタルで転送するデータのことということにしています。
要は、簡単に音楽を聴けるということは、便利さに反して本当の楽しみや満足を得ることは難しいだろうということです。
オーディオファンであれば、なんとなく言っていることが理解できるのではないかと思います。
AIスピーカーでは音楽に満足出来ないだろう
新しいオーディオの形態としてAIスピーカーというものの販売が好調なようです。
AIスピーカーの本来の目的は、オーディオではなく、スピーカーに向かって会話をして様々な用途に利用するというものです。
興味のあることをスピーカーに向かって質問すると、AIが疑問に答えてくれます。
これは現在でもiPhoneなどのサービスの中にあるものと同じで、iPhoneをお持ちの方であれば、馴染みのあることだと思います。
iPhoneなどのサービスの一つで、iPhoneに質問するとAIが答えるという機能を、スピーカーにしたというものです。
実際には、スピーカーは音を出すものなので別途に音を拾うマイクが必要になるので、AIスピーカーと言うのは、間違いなのかも知れませんが、商業上AIマイクとするよりAIスピーカーにした方が一般にイメージしやすく、AIスピーカーといった方が名称も良くわかりやすいので、AIスピーカーという名称に統一したものだと思います。
AIスピーカーで音楽を聴いたりする行為は、AIスピーカーの一部の機能に過ぎません。
しかしAIスピーカーが、一般のオーディオへと移行していくのは、時間の問題かも知れません。
これからのオーディオを考えると、かつて家庭に一台はあったラジカセのようなオーディオ機器は、AIスピーカーに集約されていくことが予想されます。
一般のオーディオが、100パーセントAIスピーカーに移行するとは言い切ることは出来ませんが、AIスピーカーのような機能をもったものが一般のオーディオとして取って代わっていくのは間違いなさそうです。
スピーカーに向かって話しかけるだけで、音楽を自動に再生してくれるのがAIスピーカーですが、音楽を聴く上では心から満足することは不可能ではないかと思います。
なぜなら、AIが本人の好きそうな音楽を常に選択して再生してくれるので、自信で好きな音楽を考え、感じ、そして購入する行動がないからです。
音楽を自分で考えて選ぶということをAIスピーカーに委ねるということは大変便利で楽ができることは間違いないことですが、自分で考えて選ばない限り真の満足を得ることは難しいように思います。
人は、楽をすればするほど、そのものに価値を見出せなくなるものです。
音楽を何も考えずに簡単に手に入るようになれば、音楽そのものに深い感動を得ることが難しくなり、一時的な嗜好物として刺激を求めるだけの存在になりかねません。
音楽を聴く為にAIスピーカーは、好きな曲を自動で選曲してくれて大変便利であるのですが、そのメリットが音楽を深く求めるという行動を阻害して、本当の意味で音楽に満足が出来なくなるのではないかと思います。
良い音楽を求め、思考や体を使って行動してこそ、真の満足というものが得られるというものです。
AIスピーカーでは表面的には音楽を楽しむことはできると思いますが、そこから得られるものに真の満足というものは出来ないだろうと思います。
