File No.059-8 スピーカーの種類と選び方(8) -スピーカー-

無指向性スピーカーについて解説しています。

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File No.59 / 08

無指向性スピーカー

無指向性スピーカーは、全方向再生スピーカーといわれ普通のブックシェルフ型スピーカーと異なりスピーカーユニットが一定の方向に向いているのではなく、全方向に放射するようになっています。

かつては、スピーカーユニットが球形あるいは、多角形の箱にマウントされていた無指向性スピーカーというものがありましたが、現在ではそのようなスピーカーは見かけません。

無指向性スピーカーの写真
無指向性スピーカー

ここで無指向性スピーカーをピックアップしたのは、厳密には無指向性スピーカーとはいわないかも知れませんが、無指向性スピーカーの特徴を持っているスピーカーを他のスピーカーの名称で販売されることで、オーディオファンが誤解しやすい製品があるから、あえて無指向性スピーカーについて掲載することにしました。

無指向性スピーカーは、厳密に無指向性スピーカーを目指して製作されたスピーカーも存在しますが、ほとんどはスピーカーの形状から無指向性スピーカーの特徴をもつものです。

スピーカーの独自の方式の名称で、全く新しいスピーカーの方式のように見えても現実には普通のスピーカーの方式で無指向性の特徴を持ったものがほとんどだと思います。

厳密な無指向性スピーカーは、スピーカーユニットを全方向に向けて配置するものなのですが、無指向性スピーカーの音の特徴だけであれば、厳密に配置する必要はなく、1つのフルレンジ・スピーカーユニットを上に向て、逆三角錐のディヒューザーを取り付けることでけでも無指向性スピーカーのような特徴になります。

逆三角錐のディヒューザー型の無指向性スピーカーの写真
逆三角錐のディヒューザー型の無指向性スピーカー

逆三角錐のディヒューザーを取り付ける方法は、比較的真面目な方法ですが、実際はそのようなものすら必要なく、スピーカーユニットを上に向けたり、左右の壁に向けることでも無指向性スピーカーらしい音になります。

つまり、スピーカーを前方方向以外の部屋の壁や天井に向けると、音が壁や天井に当たった反射した音をミックスして視聴する人の耳に届き、無指向性スピーカーのような音になります。

普通のスピーカーでも無指向性スピーカーになることのの説明図
普通のスピーカーでも無指向性スピーカーになる

この方法を利用すると音が広がり、広い空間の中から音が聴こえてきて、音場の空間の広い音が楽しめます。

このような音場の空間の広い音を、大変自然な音と感じる人も多く存在し、これらを魅力と思うオーディオファンもいるようです。

無指向性スピーカーの音を大変自然な音と感じる人は、どちらかというとオーディオ初心者に方に多いように思います。

無指向性スピーカーの広い音場に魅力があるというのは、ある程度理解できるのですが、大変自然な音というのは少し誇張されすぎている感じがします。

なぜならスピーカーユニットから出た音の反射音を視聴することになり、音像自体が大きくなりやすく、声や楽器などの定位が曖昧になるので音の芯がボケたように聴こえてしまいます。

このような特徴が、無指向性スピーカーを熟練のオーディオファンが好まないことの理由だと思います。

今回、無指向性スピーカーもどきのスピーカーについて掲載した理由は、無指向性スピーカーもどきのスピーカーを波動理論などの最もらしい方式を謳って、全く新たなスピーカーであるがごとき宣伝していることに不満があったからです。

そして、これらのスピーカーの音が、これまでになかったぐらいの高音質であるように風潮して、他のスピーカーの音を全面否定しているのが良く思えなかったからです。

無指向性スピーカーの特徴をもつスピーカーの写真
無指向性スピーカーの特徴をもつスピーカー

どのような方式のスピーカーでも物質的な面から見て価格的に適合していれば、ユニーク・スピーカーということになりますが、物質的な面から見てあまりにも高価な価格が付けられているのはオカルト・スピーカーといえると思います。

この手のオカルト・スピーカーは、口径の小さなフルレンジ・スピーカーユニットを使用して製作されているのが多く、自社でフルレンジ・スピーカーユニットを開発することなく、他社から供給されるものをマウントしたスピーカーを、独自の理論から音が良いというあいまいな言葉で大変高価な価格で販売されているものを見るとオーディオが楽しくなくなってしまいます。

かつての日本では安価でありながら内容は高級スピーカーというものが、たくさん存在しました。

そのような時代を知っているオーディオファンにはオカルト・スピーカーに興味を示すことはないでしょうが、現在の若い世代のオーディオファンは日本で普通に発売されていた安価でありながら内容は高級スピーカーというものが存在したことすら知らないので、音が良い新方式のスピーカーといえば内容を考えずに興味を示すかも知れません。

若い世代のオーディオファンが可愛そうに思えるのは、手頃で本格的な良い音のスピーカーの存在を見たこともないので比較することができないことです。

日本で優れたオーディオ・スピーカーを製造していたメーカーが、若い世代に引き継ぐことなく終焉してしまったことが本当に残念だと思います。

オーディオにはオカルトが多く存在します。

全てのオカルトを否定できるものでもありません。

オカルトであるか?ユニークであるか?の判断は、内容に対しての金額を考えることが必要だと思います。

内容に対して、あまりにも価格が乖離して高価な場合は、ユニークであってもオカルトと判断しえないでしょう。

音さえ良ければ価格など関係ないという考えもありますが、本当の意味でオーディオを発展を望むなら、この考えは否定すべきだと思います。

少なくとも、このサイトではオーディオの内容に対して価格が妥当であるかどうかを常に考慮して評価・判断することを心がけています。

全ての無指向性スピーカーが、オーディオに向いていないというのではなく、中高音の鋭さを抑えたり、広がりを得るために中高音に無指向性を利用した高級スピーカーも存在します。

これらは、各オーディオ・メーカーの良い音へのアプローチとして、大変良いことだと思います。

○メリット

音場が広い開放的な音が楽しめる

スピーカーの存在を感じさせない

●デメリット

音の密度が薄く、音像がボケているように感じる

定位が定まらない

オカルト理論で違うスピーカーになる

内容に対して、以上に高価な製品が販売されている

熟練のオーディオファンは、あまり好まない

スピーカー選びは簡単ではない  つづく


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