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フラットレスポンスを目指したスピーカー
私がオーディオで興味を持ったのは、1980年代のオーディオにディジタルという新しいものが普及する時代で、ちょうどCDという記録メディアが登場したときでした。
当時のオーディオのスピーカーは、ほとんどが3ウェイスピーカーでCDの登場により広い周波数帯域のフラットに再生してCDの中に記録されている音を全て再生することが良いということで、フラットレスポンスのスピーカーが流行っていました。
オーディオ雑誌では、新しく登場した広い周波数帯域をフラットレスポンスで再生することを目指した優秀なスピーカーが紹介されてていました。
オーディオでフラットレスポンスで再生を実現するスピーカーの考えは、合理性があり納得できるものです。

オーディオにホーン型スピーカーがあるのは知っていたものの、私はオーディオでフラットレスポンスのスピーカーこそが、最も良く音が良いと思っていました。
オーディオでプロ仕様のスピーカーがあったので、ホーン・スピーカーというものがあることは知っていましたが、ホーン・スピーカーは原理的にフラットレスポンス再生することができないので、個性的な音がするスピーカーと思っていなくホーン・スピーカーには興味を持っていませんでした。
ある時、オーディオ好きの友人がホーン・スピーカーの音が良いということを聞きました。
その友人は、非常に繊細な音を聞き分けオーディオの音センス良い人でした。 しかし正直なところ当時の私の頭の中での考えでは、周波数特性がフラットで再生できないホーン・スピーカーの音がどうして良いのだろうかと疑問に思っていました。
オーディオ好きで音センスのある友人が、そこまで好むホーン・スピーカーの音の良さとは何かであるか興味がでてきました。
その時の私の心のなかで、
『オーディオは周波数をフラットに再生するこそが最高である』
と自分の考えは間違いないということを証明するために、ホーン・スピーカーの音の間違いを探して、自分の方が友人よりオーディオにセンスがあると思いたかったのかも知れません。
理由はさておき、友人がそこまでホーン・スピーカーが良いというなら自分で何が良いのか確かめてみようと思いした。
ホーン・スピーカーの魅力とは
ホーン・スピーカーは、大型のスピーカーになるのでオーディオファンで持っている人は少ないので、普通ではなかなか聴くことが出来ません。
そこでホーン・スピーカーの音をよく知るためには、オーディオショウなどに行き、視聴会でホーン・スピーカーをじっくりと視聴してみることが一番良い方法だと思います。
実際にオーディオショウへ行ってホーン・スピーカーというものを視聴してみようと思いました。 そこで友人が好むホーン・スピーカーの音の良さ・魅力というものについて、じっくりと考えてみようと思いました。
オーディオショウに行けば、有名スピーカーメーカーのオーディオファンに大変人気のあるJ社が必ずプロ仕様のホーンスピーカー展示されており、視聴会で利用され聴けるようになっています。
とりあえずJ社のホーン・スピーカーを視聴して、ホーン・スピーカーの音の魅力を探って見ようと思いました。

J社のホーン・スピーカーは、高音域に小型のホーン、中音域に大型の矩形型ホーン、低音域に大型コーンウーハー・ユニットで構成された、音域を3つに分ける3ウェイ構成のホーン・スピーカーです。
J社のホーン・スピーカーは、ハイエンドのオーディオで最も支持されているスピーカーでもあります。
J社のホーン・スピーカーを視聴したところ、なるほどオーディオファンに支持されるJ社のホーン・スピーカーの音の魅力が理解できたように思いました。
J社のホーン型スピーカーは、歌手の声のボーカル帯域が明瞭度が高く大変クリアーな音質で、目の前に飛び出してくる感じの爽快な音です。
このようなボーカル帯域の明瞭度が高く大変クリアーで鮮やかな音は、ホーン型スピーカー特有のの魅力ではないかと思います。
ホーン・スピーカーでジャズ・ボーカルを聴くと鮮度の高いクリアーな声が、目の前に飛び出してくるようなリアルな音を味わうことができ感動そのものです。
ホーンから出てくる音がキツイ感じもしないではないですが、ジャズのソロのトランペットのを聴いたときに、たいへん生々しくリアルに再現される音を聴くと、ホーン・スピーカーの特有の音が嫌いなオーディオファンでもその魅力を否定することは出来ないでしょう。
ホーン・スピーカーのリアルに感じられる音は、本当に魅力を感じずにはいられません。
このような人の声の帯域や楽器の音が明瞭でクリアーに飛び出してくるようなリアルな音は、他のスピーカーでは、なかなか味わうことが出来ません。
ジャズ好きのオーディオファンたちが、J社のホーン・スピーカーの音を大変好むのも理解できそうです。
このようなホーン・スピーカーの中音域のクリアーでリアルな音は、ジャズ以外のの音楽でも魅力を発揮することでしょう。
前にもお話いたしましたがホーン・スピーカーの特徴は、全体の周波数帯域をフラットに再生するスピーカーで決してありません。
それでもホーン・スピーカーから再生される音は、大変リアルで気持ちが良いものです。
これは、どういうことなのでしょうか?
ある意味、不思議なことです。
私は、このオーディオショウの視聴によって友人が好んだホーン・スピーカーの音の良さというものを深く理解することができました。
これは
『オーディオは周波数をフラットに再生するこそが最高である』
と信じていた私にとって、オーディオを一から考え直す必要がでてきました。