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NS-5000の横にNSX-10000を置いて比べることができたなら
オーディオショウでNS-5000を視聴しているときにNS-5000の横にNSX-10000を置いて聴き比べることができたら良いだろと思いました。
私が、Y社の新しく発売されたスピーカーNS-5000の音に不満があるのは、Y社がかつて発売したNSX-10000というスピーカーの存在があるからです。

NS-5000をY社が以前に発売したNS-シリーズと比べるなら、価格的に考慮するとNSX-10000ということになります。
NSX-10000は、ヤマハが創業100年を迎える記念碑としての限定生産モデルでNS-2000やNS-1000Xで達成できなかったものを全て強化されて登場した集大成的といえるスピーカーです。
新しく登場したNS-5000の価格は、NSX-10000の販売価格を大幅に上回っています。
NS-5000とNSX-10000の価格差は、インフレ率から同じぐらいという考え方もありまが、NSX-10000よりも遥かに高価であるといえざる得ません。
重量は、NS-5000が35.0kg(1台)に対してNSX-10000が54.0kg(1台)で約20kgぐらい差があります。
軽量になって価格が大幅に上がっていることが、少し腑に落ちません。
スピーカーの重量と音は関係ないという人もいますが、良いスピーカーを製作しようと真面目に追及していくと、必然的に重量が重くなっていくものだと思います。
オーディオ機器の良し悪しについて、それが全てとはとは申しませんが、オーディオ機器の重量を見ればその機器がどれくらいのものかある程度理解できるものです。
軽量のオーディオ機器であっても。販売価格が安価なであればさほど問題ではないですが、、高額のオーディオ機器が軽量であったなら何か節約(ケッチっている)しているようにしか思えません。
重量があるということは、それだけ製品に真面目に力をいており、良い製品を製作しようとするとするほど、部品の性能や耐久性などを追及する必要があり、重量が増していくのは否定できない事実だと思います。
スピーカーでいえば、音の再現性を向上させるにはマグネットを強力にする必要があり、マグネットを強力にするためにには、マグネットの体積が大きくなり重量も必ず上がるのが普通です。
テクニック的にスピーカーの音を向上させることも可能ですが、本質的にスピーカーの音を良くする方法は、ユニットやエンクロージャーの強化していく必要があり、それらを強化すればするほど重量は上がるのは必然といえます。
それらの理由により良いオーディオ製品を見極めるには、重量を見ることも重要なポイントになるといえるのではないでしょうか。と思います。
以前の最高級のNSX-10000は、スピーカーの細部の質を正攻法的に追及していった結果に54.0kg(1台)という重量になったものだと考えています。
先に発売されたNS-2000やNS-1000Xでは、実現したかったがコスト的に追求ができなかったことを、全て投入して製作したのがNSX-10000というスピーカーだったのではないかと思います。

NSX-10000の設計には鮮やかさというもものはありませんが、NS-2000やNS-1000Xからの非常に地味な改良の努力の結果としてのNSX-10000が登場しNS-1000シリーズの技術を継承した集大成的なスピーカーであるといえます。
NS-1000シリーズの技術的な集大成にNSX-10000に対してNS-5000は、全てが新しい設計による新たな企画のスピーカーではないかと思います。
NS-5000のスピーカーの設計は、斬新で全てが新しい設計で非常に鮮やかさをもつスピーカーだと思います。
オーディオが大変難しいところは、良いオーディオの製作には鮮やかさ以上に細かな地味な改良の繰り返が必要なところです。
特にスピーカーは、非常にアナログ的な改良に改良を重ねてることが大切で、他のオーディオ機器の製作する以上に時間と労力、及びコストがかかります。
スピーカーの技術に斬新的な新しいアイデアは楽しく大変重要だと思いますが、そのアイデアを成熟させるには大変な労力を時間が必要になります。
長いスピーカー製作のノウハウと改良から登場したNSX-10000と斬新的な技術を採用し新しく登場したNS-5000には、比較できないくらいの歴然とした差があるように思います。
もし、許されることならNS-5000の横にNSX-10000を置いて、音を聴き比べて欲しいものです。
20年前に製造されたNSX-10000の音は、現在でも色あせることなくNSX-10000のスピーカーとしての完成度の高さに驚かれるのではないかと思います。
恐らく現在にNSX-10000があれば、NS-5000の存在が危ぶまれるようになるでしょう。
何十年もの真面目な研究・開発と改良の結果に登場したスピーカー技術の集大成的なNSX-10000の前では、新しく登場したNS-5000は非常に小さな存在になってしまうのではないかと思います。
Y社が、20年前に時代に流されてNS-1000シリーズのスピーカーの研究・開発・製造を打ち切ったことが、現在のスピーカーのNS-5000の音として現れているというしか言いようがありませせん。
自社の最新の製品が、過去の自社の優れた製品を越えられない皮肉な現実です。
ここでY社をフォローしておきますが、自社の最新の製品が、過去の自社の優れた製品を越えられないのはY社だけではありません。
日本の大手のオーディオメーカー全てにいえることで、グローバルに現を抜かして国内での設計・生産を軽視したメーカーのほとんどは、過去の自社の優れたオーディオ製品を越えられないのではないじかと思います。