File No.056-6 優秀なスピーカーメーカーだったY社の新しいスピーカーについて考える(6) -スピーカー-

以前のY社の最高級スピーカーの実力について解説しています。

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File No.56 / 06

以前のY社の最高級スピーカーの実力

以前のY社のスピーカーの代表といえるものはNS-1000Mということになりますが、NS-1000Mは、ディジタルオーディオが主流でない1974年の設計なので、スピーカーの先進性となると時代的に少し劣る感じは否めません。

それらのことを考慮するとNS-2000からNS-1000Xを経て、NS-1000シリーズの集大成として登場したNSX-10000が、Y社のスピーカーの最高の実力をもったスピーカーだといえます。

Y社には、NSX-10000以上に挑戦的なGF-1という超高級スピーカーも存在しますが、超高価でスピーカー自体がアクティブスピーカーであったり、サイズも大きいので一般的ではありません。

以前のY社のスピーカーの実力を最も代表しているのは、やはりNSX-10000ということになると思います。

YAMAHA NSX-10000の写真
YAMAHA NSX-10000 3 way speaker system

20年前に発売されたY社のNSX-10000は、どれぐらいの実力だったのかを知ることが、新しく発売されたNS-5000をより理解できるようになろと思います。

NSX-10000というスピーカーが、どのようなスピーカーかを説明すると、、最初に登場したNS-2000が高い解像度をもった高品位な中高音をもっていたスピーカーでしたが、若干の低音のバランスに癖がありました。

次に登場したNS-1000Xは、NS-2000よりも全体の音ののバランスが優れていたのですが、音のスケール感がもうひとつ欲しいという感じがありました。

NSX-10000は、それらのNS-2000とNS-1000Xにあった不満を全て解消したスピーカーだといえます。

YAMAHA NS-2000 ⇒ NS-1000X ⇒ NSX-10000の写真
NS-2000 ⇒ NS-1000X ⇒ NSX-10000

NSX-10000は、解像度の高い高品質な中高音と解像度の高いクリアーで明快な低音を上質にバランスされた音質で登場したNS-1000シリーズの最高峰といえる最高級スピーカーです。

NSX-10000は、Y社の創業100周年を記念して1987年発売されたスピーカーで、日本製のスピーカーとして1本の価格が40万円もした最高級といえるスピーカーでした。

NSX-10000は、Y社の大変優れたスピーカーのでしたが、たいへん高価だったこともあって販売台数はNS-2000とNS-1000Xと比べて遥かに少なかったと思います。

現在では、1本40万円のスピーカーなど何処にでも存在しますが、当事の日本のスピーカー市場では大変高価な部類に入るスピーカーでした。

現在のオーディオファンには1980年代の日本のスピーカーが、1本40万円の価格がスピーカーがどのようなものであるか、なかなか想像できないのではないかと思います。

1980年代の日本のオーディオメーカーのスピーカーの製作は、世界一真面目に追及していました。

1980年代の日本のオーディオメーカーは、スピーカーの性能の鍵となるスピーカーのユニットから設計・開発・製造しており、スピーカーの性能を追求し物量を投入したスピーカーでは海外オーディオ・メーカーのスピーカーを大きく引き離していました。

当時は、1本10万円ぐらいのスピーカーを選べば、かなりの物量を搭載された優れたスピーカーが手に入れることができました。

現在のオーディオでは10万円位のスピーカーは、音質をテクニック的にコントロールした製品が多く、貧弱なスピーカーユニットなど中身がスカスカのものが多く見かけられますが、当時の日本のオーディオは貧弱なスピーカーは存在することすらできない状況でしした。

その点を考えると現在の若いオーディオファンは、日本の本格的なスピーカーの時代を知らないので可愛そうです。

1980年代という国内で真面目に性能を追求してスピーカーを製作していた時代にスピーカーに1本40万円を付けたということは、そのスピーカーにメーカーの技術者がどれほど力を入れて製作をしたかは、計り知れないものがあります。

それぐらい当事の日本のスピーカーで1本40万円するというのは、音の好き嫌いは別にしてもの凄いスピーカーなのです。

現在のスピーカーになれ親しんだ若いオーディオファンにはNSX-10000というスピーカーがどのようなものか想像するのが難しいかも知れませんが、Y社のスピーカー技術の全てを投入したスピーカーであり、現在の40万円のスピーカーでは考えられないほどの贅沢な材料の投入や丁寧な仕上げのスピーカーであることは間違いない事実です。

NSX-10000で音楽を聴くと高品位に一音一音が美しく丁寧に再生され、Y社のスピーカーらしい繊細で美しい中高域とクリアーで明快な引き締まった低音を体験でき、直ぐに素晴らしいスピーカーであることがわかり、高品質で完成度の高い実力のあるスピーカーとはどのようなものか理解できます。

もしNSX-10000のスピーカーが優秀なスピーカーと思えないというオーディオファンがいれば、それは大変な誤解ではないかと思います。

NSX-10000の潜在能力を最大に引き出すには、オーディオアンプに相当な低音のドライブの能力が必要になります。

低音のドライブ能力というのは、ただ低音の量感のあるということではなく、低音の分解能が優れている必要があり、低音の分解能が優れているオーディオアンプでNSX-10000をドライブすると、NSX-10000の能力の高さを肌で体験できると思います。

YAMAHA NSX-10000の前面と背面の写真
YAMAHA NSX-10000の前面と背面の

NSX-10000は、音質を含め間違いなく20年前の日本スピーカーを代表とする1つといえ、Y社のスピーカー技術の傑作といえるスピーカーでした。

現在、、NSX-10000を超える実力のあるスピーカーを製作するのは、大変なことだと思います。

NS-5000とNSX-10000と比較

NS-5000とNSX-10000と比較の写真
NS-5000とNSX-10000と比較表

NS-5000がNSX-10000の重量がNS-5000が35.0kg(1台)に対してNSX-10000の54.0kg(1台)で、重量に19.0kgの差があります。

重量に19.0kgの差は、スピーカーユニットやキャビネットの強化の差になっているように思います。

NS-1000Mが31.0kg(1台)なのですが、もしNS-5000がNS-1000Mを目指したとしたら、販売価格的に見て寂しいものがあります。

NS-5000は、最低限NSX-10000を超える目標が必要だと思います。

スピーカーの能率の出力音圧レベルがNSX-10000が90dB/2.83v/mに対してNS-5000が88dB/2.83v/mに下がっているのが気になります。

高級3ウェイブックシェルフ型であれば、出力音圧レベルを90dB/2.83v/mを達成して欲しかったと思います。

NSX-10000の時代は、スピーカーに使用されるマグネットの磁束密度を高くすることが重要だったので、どの高級スピーカーのカタログをみてもマグネットの磁束密度が記載されていましたが、NS-5000には記載されていません。 (NSX-10000のカタログにはマグネットの磁束密度は記載されていませんが、NS-2000のカタログには磁束密度されています。NSX-10000は、NS-2000の発展型といえるので磁束密度の記載を省略したものだと思います。)

マグネットの磁束密度の強化は、必要なくなったのか疑問です。

NS-5000の総重量と低音のコシの弱さから推定すると、NS-5000に使用されているマグネットは、NSX-10000に比べて遥かに貧弱ではないかと想像できます。

その他、NSX-10000には異種金属の介在しないプラズマポット溶接ネットワーク回路を採用されていましたが、NS-5000にも継続して採用されたかはどうかは不明です。

NS-5000とNSX-10000の仕様を比べて考えると、NSX-10000はスピーカーの基本的な機能・性能を重視して製作された正攻法のスピーカーに対して、NS-5000は、より良い音・音質を追求のアイデア・テクニックを重視したスピーカーに見えます。

NSX-10000は、究極のスピーカーの性能を求めた純日本的な考えの地味なスピーカーに対して、NS-5000は海外のスピーカーのような音楽を良く再生することを重視した海外のスピーカーの考えに似たよう思考のスピーカーな感じがします。

どちらのスピーカーを理想をするかは、オーディオファンの好みの問題になると思います。

私自身は、日本のオーディオメーカーのスピーカーは、NSX-10000のような堅物のような真面目さが好きですが、これだけはオーディオファンの好みの問題なので、必ずこちらの方が良いということはできないのが正直なところです。

NS-5000への心配  つづく


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