File No.046-2 『音づくりに生きる』 - ロボットと名人芸の結晶『ダイアトーン』開発物語(2) -スピーカー-

DIATONE P-610(P-62F)とDIATONE DS-1000番シリーズについて解説しています。

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DIATONE P-610(P-62F)の後継機

DIATONE P-62Fは、ダイアトーンの誕生のきっかけといって良いフルレンジのスピーカーユニットで、『音づくりに生きる』の本の中でもメインの物語になっています。

このスピーカーユニットは、ユニットだけを購入してキャビネットを自作する時代に発売されたもので、発売当時では信じられないぐらいの再生レンジの広い高スペックのスピーカーユニットでありました。

ダイアトーンのP-62Fが登場したことで、他のメーカーのスピーカーユニットの開発に影響をしたと思われます。 P-62Fが登場は、他のメーカーの16cmのフルレンジのスピーカーの性能が向上させたぐらいの名機だといえるでしょう。

P-62Fは、フルレンジ・スピーカーユニットとして当時では再生周波数が広く、音のバランスが大変優れたものでした。 ダイアトーンの名機といわれたP-62Fは、後にP-610という型番で継承されていきました。 P-610は、いまだに現在のオーディオファンに注目されており愛用しているユーザーも多く存在している人気ののスピーカーユニットです。

1980年代にトランジスターアンプキットを販売していた会社の方で高価なオーディオに対して批判している本を出版していたオーディオ評論家のM氏も、このダイアトーンのP-610には大変高い評価しており、大きな箱に入れたP-610の音は、大型ウーハーのついたスピーカーの低音よりも上回ると絶賛していたスピーカーユニットでもあります。

DIATONE-P-610フルレンジユニットの写真
DIATONE-P-610 フルレンジユニット

ダイアトーンのP-610は、発売からモデルチェンジを繰り返し、発売停止後に限定的に再販されて約50年あまり発売されてきた実績もあり、恐らく市販されたスピーカーユニットのなかでも最高のロングセラーを記録しているものだと思います。

ダイアトーンの技術者は、スピーカーの音で迷えば原点のP-62Fの開発の時に戻って考えるそうです。 それぐらいダイアトーンをささえた技術者にとって、P-62Fの存在は大きいものだったと思います。

しかし、今では原点に戻る場所すらなくなってしまいました。

DIATONE DS-1000番シリーズについて

ダイアトーン・スピーカーは進化し続けてきましたが、ダイアトーンというスピーカーの最もダイアトーンらしい特徴をもつのは、1980年代から登場したDS-1000番シリーズではないかと思います。

これには、オーディオファン各人の思い入れがあるのでオーディオ世代によって、異論があるかも知れませんが、スピーカー技術の結晶としてダイアトーンを眺めてみるとDS-1000番シリーズの登場が最もインパクトがあると思います。

ダイアトーン1000番シリーズの写真
ダイアトーン1000番シリーズ

1980年代から登場したダイアトーンのDS-1000番シリーズは、スピーカーの再生音に対して徹底的に無個性を目指し、高密度・高解像度で広い周波数の再生するハイスピードなサウンドへの挑戦のように思われます。

もちろん音の変換機であるスピーカーが、キャビネットなどの影響を全く受けないことは不可能なので無個性などありえないことなのですが、これまでのスピーカーを製作のコンセプトとは全く違う、新しくスピーカーの再生領域の拡大を追及していたことは間違いありません。

新しくスピーカーの再生領域の拡大を追及するようになった理由としては、オーディオにCDという新しいディジタル・オーディオというものの登場が大きかったのではないかと思います。

ディジタルオーディオの登場は、いままでのオーディオでの常識を覆しスピーカーの存在を一から見直しに迫られました。

CDというディジタルオーディオの登場で、今まで難しかったとされる周波数帯域4~2万Hzのフラットな再生が可能になり、特にアナログでは難しかったノイズを伴わないクリアーで明快な低音の再生が可能としました。

CDの低音域の再生能力は、これまでのスピーカーの方法では対応しきれなくなるので、ウーハーにアラミッドハニカムなどの今までスピーカーでは利用されることがなかったようなハイテクの航空機の素材まで使用することで対応することになりました。

ディジタル・オーディオの登場は、すべてのオーディオ機器の見直しに迫られたように思います。 特にディジタルオーディオの分野では、日本が世界にリードしていたので日本のメーカー各社が最新の技術を投入してオーディオの製作が実施されるようになりました。

スピーカーでは周波数帯域のフラットな再生、アンプではイコライザー部による音質劣化の排除やセレクター部の音質の見直しなど、さまざまな改良が加えられるようになり、ほとんどすべてのオーディオ機器の音質が改善に向かいました。

特にスピーカーの性能向上は、ダイアトーンが最も早くからディジタルオーディオ対応に熱心に研究がなされており、早い内から低音再生にはクリアーで明快な低音の再生の実現を掲げていました。

そのときにダイアトーンのDS-1000番シリーズが登場してきたので、ディジタルオーディオ対応のスピーカーとして、当時の画期的な性能のスピーカーの1つだったと思います。

ダイアトーンのDS-1000から不要な共振を除く為、高い剛性のエンクロージャーやラウンドバッフル、高密度・高解像度再生の為にボロンを使用したハードドーム・ツイーターやスコーカー、音のクオリティを阻害するアッテネータの廃止など、技術的な要因を含みディジタル対応スピーカーとしてのスピーカーの形が完成したように思います。

もちろんダイアトーンのDS-1000番シリーズが登場する前にには、DS-505などの最先端技術を投入したスピーカーの存在は無視できるものではありませんが、ダイアトーンのスピーカーとして技術の成熟と完成を最も示しだしたものは、DS-1000番シリーズからだといっても過言はないでしょう。

ダイアトーンのDS-1000番シリーズは、ダイアトーンのスピーカー技術の結晶として、最もダイアトーンのスピーカーというものが完成されたもので、その後のダイアトーンのスピーカーの設計ポリシーを決定づけたといっても良い、新しいダイアトーン・スピーカーの始りだったことは疑う余地はありません。

ダイアトーンのDS-1000番シリーズの登場は、オーディオ・スピーカーとして衝撃的であったと思います。

DIATONE DS-5000  つづく/em>


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