File No.046-7 『音づくりに生きる』 - ロボットと名人芸の結晶『ダイアトーン』開発物語(7) -スピーカー-

ダイアトーンDS-1000番シリーズの音は、同じではないことについて解説しています。

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DS-1000番シリーズの音は、同じではない

DS-1000番シリーズは、ダイアトーン・スピーカーの代表作として、1980年に登場してから何度もモデルチェンジを繰り返し後継されてきました。

多数あるDS-1000番シリーズは、発売時期(同じ型番の後継機モデル)によって、音の傾向が大きく変わってきたように思います。

ここではDS-1000番シリーズの音の傾向について述べていきたいと思います。

ダイアトーン・スピーカーは、DS-1000シリーズは、DS-1000、DS-3000、DS-10000というように大成功を達成しダイアトーン・スピーカーの代表作として、その後後継機とがつぎつきに登場させてきました。

オーディオというものは大変面白いものなので、初期のDS-1000シリーズと後に発売されたDS-1000シリーズの音の傾向が大きく変わってきたように思います。

同じ番号の後継機モデルであれば初期のモデルで音の不足部分が改良されていき、後期のモデルは、より完成形になっていくので音がだんだんと良くなっていくのが普通です。

DS-1000シリーズも初期のモデルから改良されていき、低音の伸びや中高音のノイズなどが大幅に改良されていきました。

DS-1000シリーズの性能をアップしているところは、以前よりも良くなっているのですが、良くなったのとは裏腹に初期のモデルと音の傾向が大きく変わってしまいました。

どういいうことがといいますとDS-1000シリーズの後期のモデルには、後期のモデルにしかない良さがあるのですが、初期のモデルにあった良さ(特徴)が薄れてしまったということです。

このようなことが、オーディオというものが奥が深く面白いところでもあると思います。

数あるDS-1000シリーズのモデルには、もちろん初期のDS-1000シリーズのようなダイレクト感のある音に良く似た傾向のスピーカーもありますが、全体的に見て後期の方は非常にSN比が高くなり音が滑らかで丁寧になっている傾向を感じました。

初期のDS-1000番台のシリーズは、特別な仕様のDS-10000を除き、中高音の圧倒的な高密度・高解像度とハイスピードで明快なクリアーで歯切れの良い低音が特徴になっています。 低音の輪郭がシャープで歯切れの良いことから、どこかドライな感じの音質で、音がエネルギッシュで軽やかというのが大変な魅力でした。

中音域の再生にボロンを使用したハードドーム型ののスコーカーは、高密度で高解像度のでスピード感のある音は非常に特徴的です。 初期のモデルのボロンを使用したハードドーム型スコーカーは、他のコーン型を使用したスコーカーのスピーカーよりも中音域の解像度は遥かに高く音の粒が見えるような感じの高密度の中音域の再生します。 これはダイアトーン初期のDS-1000番のシリーズの特徴の1つでありました。

このようなダイアトーン初期のDS-1000番のシリーズのストレートでダイレクト感のある音は、CDやレコードに入っている音の粗までも再生してしまう特徴があり、再生される音が少し荒っぽく聴こえる感じもありました。

ダイアトーン初期のDS-1000番のシリーズのハイスピードでクリアで明快な低音は、重低音の再生がレンジが他の同じクラスのスピーカーの低音の再生よりも控えめな感じが否めないことも確かでした。

私自身も初期のDS-1000番のシリーズの低音の再生が、他の同じクラスのスピーカーよりも少し控えめな感じのことは気になっており、ダイアトーン初期のDS-1000番シリーズにもう少しあればもっと良かったのではないかと思いました。 特にDS-3000など非常に良く出来たスピーカーの低音がもう少しあれば、素晴らしく良い音になるのではないかと頭の中で想像していました。

DS-1000シリーズは、モデルチェンジを繰り返しながら、少し不足感があった低音が大きく改善されて、低音域の再生が拡大されてきました。 また、中高音の音は、高密度・高解像度を維持しながらより美しく滑らかな再生音に進化していきました。

したがって、後期のDS-1000番シリーズの音は、低音が拡大されて中高音の再生音が美しく滑らかになっています。 (低音が拡大されて中高音の再生音が美しく滑らかになっているのは、初期のDS-1000番シリーズ以降のDS-1000番シリーズのスピーカー全てとはいえませんが、後期のモデルは、そのような傾向が間違いなくあります。)

新しく発売されたダイアトーンのDS-1000番シリーズは、中高音の再生をより低ひずみの追求か初期のユニットに採用されたボロン素材に改良が施されて高精度化が計られることで高SN化を実現しています。

低音は、以前のDS-1000番シリーズよりも大幅に拡大されていますが、この低音域の再生音の拡大は、ウーハーコーンのサイズアップによる最低周波数の再生を拡大されたものではなく、視聴上の低音のバランスを下げたような感じです。

新しく登場してきたダイアトーンのDS-1000番シリーズは、低音の再生の拡大がはかられており、中高音の再生音が美しく滑らかになっているので、どのような音楽ソースを高密度・高解像度で美しく滑らかな音で再生されるようになっています。

後期のDS-1000番シリーズは、初期のDS-1000番シリーズに感じたような中高音の荒さのようなものがなくなり、中高音の再生音にほとんどノイズを感じさせない音になりました。

オーディオで普通に考えれば再生帯域が拡大され、ノイズが少なくなることは間違いなく良いことなので、普通であれば後期のDS-1000番シリーズの性能の向上は良いことばかりだと考えても良いと思います。

しかし、私の後期のDS-1000番シリーズを視聴した感想では、信じられないことにDS-1000番シリーズは性能の向上したことがが必ずしも良いとはいえないように感じてしまいました。

私自身も新しくなったDS-1000番シリーズの音が、昔のDS-1000番シリーズよりも、不満部分か解消されて遥かに音が良くなっていることに期待していたし、間違いなく初期のモデルよりも良くなっているということを信じていました。

私が初めて後期のDS-1000番シリーズの音を視聴したのは、友人宅でDS-2000の何世代か後の後継機だったと思います。

ところが後期のDS-2000の音は、私がイメージしていた音とは大きく異なり物足りなさを感じてしまいました。

後期のDS-2000は、初期のDS-2000から大きく性能が改善され、低音の拡大SN比の向上など、音の細部のすべての部分か改良されてきたスピーカーなので再生音に不満をもつのが不思議なぐらいです。

決して後期のDS-2000の音が良くないといっているのではありません。 後期のDS-2000の音は、どのような音楽ソースでも程よく再生できる優秀なスピーカーで音のクオリティも申し分なく、非常に良く出来たスピーカーだと思います。

しかし、後期のDS-2000の音に物足りなさを感じてしまうのです。

確かに後期のDS-2000の音は、解像度と美しく滑らかな中高音をもつ大変優等生的なスピーカーだと思いまが、私自身の考えでは、この後期のDS-2000の大変優等生的な音の特徴が、返って初期のDS-1000番シリーズにあったようなダイレクトでストレートの感じの魅力というものを少なくしているように感じてしまいます。

後期のDS-1000番シリーズは、ダイアトーンが真面目に良い音を研究開発してきたの結果の産物であり、決して悪いことではなく後期のDS-1000番シリーズの音を簡単に否定できることではありません。

しかし、ダイアトーン・スピーカーの性能が優秀になればなるほど、初期のDS-1000番シリーズにあったようなダイアトーンらしい独自の個性が薄れてきて、他の優秀なスピーカーの音とあまり変わらなくなり、必ずしもダイアトーン・スピーカーを選ぶ必要を感じなくなるという矛盾が生じてしまいます。

私は、このような結果になったことに正直驚かされたのですが、このようなことこそがオーディオの良い音についての考えの新しい発見であり、オーディオは奥が深く、オーディオというものが他の家電製品とは違う楽しいところだと思います。

このような音のついての問題は、スピーカーを真面目に追及して開発してさえいれば何れ何らか形で解決できるものだと思いますが、現在の日本のオーディオの開発状況を見つめていると、残念ながら現在では音の問題すら定義するところがなくなってしまっているので永遠に解決することは不可能になってしまいました。

既に日本のオーディオを代表するスピーカーブランドのダイアトーンのスピーカーは、生産終了しているために新しく入手することは出来ませんが、もしダイアトーンというスピーカーに興味があり中古製品を購入するときには、

『DS-1000番シリーズの音は発売時期により、音の傾向がかなりの違いがある』

ので、そのことを考慮していた方が良いと思います。

本当の意味でDS-1000番シリーズのダイアトーンらしい音を堪能したいなら、初期のDS-1000番シリーズを選んだ方が理解しやすいのではないかと思います。

ダイアトーン・スピーカーの終焉

音づくりに生きる - ロボットと名人芸の結晶『ダイアトーン』開発物語 著者 米山義男/後藤慶一という本が出版されて約10年が経過してダイアトーンのスピーカー製作が終焉を迎えました。

1980年のオーディオを知っている私にとっては、ダイアトーンのスピーカーが生産終了することなど考えてもいませんでした。

どのように液晶テレビや携帯電話やコンピュータが発達したとしても、音声が絶対に必要であり、映像が高度化すればするほど良い音への追求は必要不可欠だろうと考えてていいたからです。

しかし、ダイアトーンを生産していた企業の経営陣の考えは全く違っていたようです。

オーディオを生産している企業の経営陣が変わり、新しくなった経営陣には自社で50年以上に渡り真面目に研究開発してきたスピーカーというものに、全く価値を見出せなかったのでしょう。

50年以上オーディオを開発してきた企業の技術やノウハウを、1つの決定よって失われていくことは、本当に残念なことだと思います。

私自身は、ダイアトーン・スピーカーの生産規模を小さくするなり、オーディオ専門の子会社を設立するなりして、未来の人のために残して欲しかったのが正直な気持ちです。

このように残念なことはダイアトーンのスピーカーだけでなく、日本の製造業全体にわたり発生しており、日本の製造業は、いつのまにか

『自分の足元を食うたこ』

のように進んでいってしまっているように思います。

現在の日本の企業は、株主と経営陣だけのお金儲けだけの追及しか考えてなく、未来の日本に希望や誇りを残す気持ちが全く考えないで経営をしていることが寂しく思います。

ダイアトーン・スピーカーを残す選択は、本当に出来なかったのだろうか?

ダイアトーン・スピーカーの終焉は、オーディオファンあるいはこれからオーディオファンになる人とって本当に残念な結果であると思えてなりません。

DIATONE 1000番シリーズの写真
DIATONE DS-1000番シリーズ

補足

現在ダイアトーンのスピーカーは、京都の子会社の方に引き継いだときいています。 非常に閉鎖的な状況で市場では見かけることはなく、ネットで確認が出来る程度です。 もちろんオーディオショップやオーディオショウでも見かけることもありまん。 販売価格も以前のように安価ではなく、一般のオーディオファンには無関係で何を求めているのかわからない状況です。 このダイアトーンのスピーカーの引き継きについては、何を求めているのか理解できていません。

                          おわり

                         



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