File No.046-6 『音づくりに生きる』 - ロボットと名人芸の結晶『ダイアトーン』開発物語(6) -スピーカー-

DIATONE 2S-305とDIATONE DS-505について解説しています。

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File No.46 / 06

DIATONE 2S-305

ダイアトーン・スピーカーを語るのには、2S-305というスピーカーに触れる必要あると思います。

2S-305は、NHK共同開発で製作され、NHKの公式モニター・スピーカーとして長期にわたり採用されてきました。

ダイアトーンの2S-305は国内のラジオ局やスタジオに長期に渡り採用されてきた実績を持ちます。

発売から30年以上もマイナーチェンジを繰り返して発売されたスピーカーシステムは、恐らくダイアトーンの2S-305ぐらいしかないのではと思えるぐらいの超ロングライフの国産モニター・スピーカーです。

2S-305は、国内・海外を問わず長期に渡りモニター・スピーカーとして貢献してきたは素晴らしい国産のスピーカーだと思います。 2S-305の海外のモニタースピーカーの活躍に関しては若干異論がある人もあると思いますが、一応海外でもモニタースピーカーとして使用されていたこともあるぐらいに捕らえれば良いと思います。 この2S-305の原型となる2S-660が発売当時の国内のオーディオの状況は、スピーカーユニットを購入してから自前のキャビネットに取り付けて楽しむのが普通でした。

2S-660は、当時のスピーカーの状況において、キャビネットの重要性を一般に示したスピーカーでもあります。

DAIATONE 2S-305の写真
DAIATONE 2S-305 2 way Monitor speaker system

2S-660は、キャビネットの音の反射まで考慮されて設計されているのでキャビネットの角が曲げられているという当時では珍しいラウンドバッフル仕様になっており、たいへん凝った美しいつくりになっています。 このラウンドバッフル仕様は、後のDS-1000シリーズにも継承されています。

この2S-660の登場から日本のオーディオメーカーのスピーカーは、キャビネットを重要視するようになり、現在のよう箱の状態で販売されるスピーカーが標準になっていきました。

私自身は、2S-660の後継機の2S-305の存在をオーディオ雑誌などで知っていましたが、2S-305の実際の音を視聴したことがありませんでした。

ダイアトーンのDS-1000シリーズが発売された1980年代にも2S-305は現役のモニタースピーカー活躍していましたが、1980年代のオーディオの状況では多くの高性能のスピーカーが登場してきので、オーディオショップなどで展示されることもほとんどなく、私自身は2S-305を聴く機会がなかったのが理由になります。

何十年の間も国産のモニタースピーカーとして君臨した2S-305は、1980年代には日本のオーディオでも伝説的な存在のスピーカーになっていました。

最近になって2S-305を聴く機会に恵まれたので、DS-1000シリーズとの音の違いを述べてみたいと思います。

2S-305の音は、2WAYスピーカーとしてバランスがたいへん優れており、どのような音楽もそつなく再生できるスピーカーだと思います。

2S-305の音は、1980年代のスピーカーのワイドレンジ再生からすればナローレンジ再生な感じは否めませんが、2S-305の発売当初ではワイドレンジ再生が出来るモニタースピーカーだったほうでしょう。

2S-305を視聴して感じたことは、いろいろな音楽を程よく再生して、癖も少なく普通に良い音で再生され、音楽をクールに捉える感じがあります。

 

『これが、何十年も愛され続けてきた国産のモニタースピーカーの音なのか』

と思いました。

しかし、以外にもこれだけ優秀と絶賛された国産のモニタースピーカーなのですが、初めてDS-1000を視聴した時のような驚きや感動もありませんでした。

2S-305にはDS-1000のような中高音の高密度・高解像度などという飛び出したものもなく、どのような音楽をそつなくクールに再生するだけの優等生的なスピーカーで、再生される音に全くといって良いほど色気のようなものが感じられません。

その音こそがモニタースピーカーの音といわれれば、それまでになるのですが、2S-305で再生される音には物足りなさを感じてしまいます。

2S-305のエンクロージャーは、箱の共振を積極的に利用して低音再生を拡大を図るタイプのスピーカーなので、DS-1000シリーズにあるようなエンクロージャーの剛性を高めて箱の共振を抑えていくタイプのコンセプトのスピーカーとは設計思想が異なります。

なかでも2S-305の再生音で一番気になったことは、低音の再生音がたいへん硬質であるということです。

私は、大型スピーカーで低音がここまで硬質なものは聴いたことがありませんでしたので2S-305の再生音が、硬質な低音だったことには本当に驚かされました。

2S-305の硬質な低音こそが音楽をクールに捉え、精密なモニタリングか出来るということなのは理解できるのですが、再生される音に全く色気が感じられず面白み感じることができないのです。

2S-305は、オーディオ雑誌等で海外でも使用された実績が謳われていますが、2S-305の音を視聴して正直どうだったのだろうか?と思えてきます。

2S-305を使用して音楽を正確にモニターすることは可能だと思います。 2S-305の音楽や音声を正確にモニターできることが、長期に渡り国内のモニタースピーカーとして君臨してきたのも理解が出来ます。 しかし、実績がありモニタースピーカーとしての性能が優秀であったとしても、音楽を捉えるモニタースピーカーとして足りてない要素が存在しているように思います。

2S-305のような音で音楽をモニターすると音の細部を詳細に見分けたりすることが出来るかもしれませんが、音楽の芸術性を捉えるのが難しいように思います。

音や音楽を周波数の塊と捉えるだけであれば2S-305のモニターで十分だと思いますが、芸術作品として音楽を捉える場合は、2S-305のモニターでは不十分に思えてなりません。

万人からすればどのように2S-305を考えるか分かりませんが、少なくとも私であれば2S-305を使用して音楽作品をモニタリングをしたいとは思いませでした。 2S-305を使用して長い時間を音楽をモニターするなど考えることができません。

誤解がないようにもう一度申したいのですが、2S-305が優秀なモニタースピーカーでないといっているのではありません。 2S-305が大変優秀なモニタースピーカーと認めた上で、音をもう一段高いところからとらえたえたいと考えているので2S-305が、音楽用をモニタースピーカーとして足りない部分があると考えています。 2S-305が超一流のモニタースピーカー故に、非常に厳しい評価をさせて頂いてます。

このような理由から、2S-305が世界の標準モニタースピーカーには君臨できなかったのだろうと思います。 海外でも2S-305をモニタースピーカーとして使用されたという例は、よほど特別な例ではないでしょうか。

DS-1000番シリーズの音には、2S-305に欠けていた音楽を豊かに再生する能力が備わっているように思います。

DS-1000番シリーズの前には2S-305という国産モニタースピーカーがあり、2S-305のおけるスピーカーというものを真面目に追求してきたことが、今のダイアトーン・スピーカーがあるものだと考えられます。

ダイアトーンの2S-305が、日本のオーディオに貢献したことは紛れもない事実だと思います。

モニタースピーカーの名機の2S-305があってこそ、DS-1000番シリーズの登場があったと考えられます。

そのことを考えると2S-305は、偉大な国産モニタースピーカーだったと思います。

DIATONE DS-505

ダイアトーンは、DS-1000番シリーズを登場させる前の1970年代に既にDS-505、DS-503というハイテク素材を利用したスピーカーを発売していました。

ダイアトーンが他のメーカーに先駆けてディジタル録音の研究をしていた所以に、他のオーディオ・メーカーに先駆けて、ディジタル・オーディオを再生に適したスピーカーを研究・開発していた結果の上にDS-505、DS-503を登場させたものだと思います。

DAIATONE DS-505の写真
DAIATONE DS-505 4 way speaker system

ダイアトーンは、1970年後半にはハイテク素材を利用したスピーカーのDS-505、DS-503を発売しており、他社に先駆けてスピーカーの未来の形を想定してことには驚かされます。

一般のオーディオファンにはディジタルオーディオというものが全く知られていない1970年代に、ダイアトーンがDS-505、DS-503のよううなハイテク・スピーカーを登場させた功績は大きいと思います。

DS-505、DS-503のスピーカーの出来は、まだまだ完成形までにはならなかったかもしれませんが、このDS-505、DS-503の存在があったからこそ、今後のダイアトーン・スピーカーの主流となるスピーカーの完成形のDS-1000シリーズの登場させることができたものだと思います。

DS-1000シリーズの前の形としてDS-505、DS-503の存在は、大変大きいものだったことは間違いありません。

DIATONE DS-1000番シリーズの音は、同じではない  つづく


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