File No.69-10  CD(コンパクトディスク)が登場した時のこと(10) -コラム-

CDプレーヤー試作機『ゴロンタ』について解説しています。

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CDプレーヤー試作機『ゴロンタ』

VTRを利用してディジタル録音を成功させたソニーは、既に光学ディスクを開発していたオランダのフィリップ社とお互いの技術を共用するフリークロスライセンスを結び、新しいデジタル・オーディオ・ディスクの共同開発することになりました。

ソニーは、フィリップと新しいデジタル・オーディオ・ディスクの規格について、多くの意見を出し合い、最終的に直径12cmの光ディスクにサンプリング周波数44.1kz、量子化ビット数も16ビットに決定されました。

この規格は、ほとんどソニーが提唱したものでした。

良くCDは、音がダメだと批判されていますが、フィリップ側が提唱した量子化14bitを断って、音質優先からソニー側が、がんばって量子化16bitに決定させたことは、ソニーの大きな功績だったのではなかったかと思います。

ソニーは、フィリップと合意した新しいデジタル・オーディオ・ディスクの規格を1980年6月にDAD懇談会に提案し、DAD懇談会への提案を行う一方で、直ちに第1号機の商品化にとりかかった。

CDプレーヤー第1号機の発売時期は、1982年10月という指示があった。

CDの規格が統一できた段階では、CDプレーヤーを商品化するには、量産可能な半導体レーザーやデジタル信号処理する集積回路のLSI化などの技術的に多くの課題があったので、1982年10月に商品化という指示というのは、大変な無理がありましたが、流石当時のソニーの技術者の優秀さや、様々な企業の協力体制から、1981年の秋のオーディオフェアに、サイズが小さくスマートなCDプレーヤーの試作機が参考出展することができました。

CDプレーヤーの試作機の写真
CDプレーヤーの試作機

D/Aコンバーターは、それまで高価な部品を組み合わせて30万円近くしていたものが、1万円程度のIC(集積回路)1個に収めることに成功し、プレーヤーの大幅な小型化とコストダウンをすることが可能になりました。

信号処理用に500個の必要だったICは、小さなLSI3個に凝縮されています。

1981年のオーディオフェアに新しく登場したCDプレーヤーの試作品は、前面にCDのディスクを立てに垂直にセットセットするプレーヤーで、再生すると銀色のCDがクルクルと回るのが見えて、CDが再生されているようすが窓から確認できるというものでした。

当時、このように垂直にCDを回して再生させることは技術的にかなり難かったのですが、 CDプレーヤーの見栄えをよくしたかったことと、CDプレーヤーが発表される最初だっやのでCDというディスクが回る様子を見せることで、CDという新しいオーディオを多くの人に見せて理解してもらう必要があったのかも知れません。

ソニーの技術者たちが、技術の粋を結集して出来上がったと自負するCDプレーヤーの試作機だったのですが、周りから少し不恰好であるということで、この試作機は『ゴロンタ』という、ありがたくないニックネームを頂いたそうです。

恐らくこの『ゴロンタ』のニックネームがきっかけになり、ソニーの第一号製品である『CDP-101』は、垂直回転動作を採用しなかったのかも知れません。

注釈》》1981年のオーディオフェアの時点ではCDプレーヤー試作機『ゴロンタ』は、CDという名称は使われていなかったかも知れません。 なぜなら当時は、DAD=Degital Audio Disk(デジタル・オーディオ・ディスク)という名称が使われていたからです。 しかし、再生用ソフトウエアに使用されたのは間違いなくCD(コンパクトディスク)だったので試作機『ゴロンタ』をCDプレーヤー試作機として紹介しています。

CDP-101

1982年10月1日、ソニーから記念すべき世界初のCDプレーヤー第1号機の『CDP-101』が発売されました。

『CDP-101』は、他のメーカーのCDプレーヤー第1号機よりひとまわり小さく、価格も3~5万円安く設定されていました。

このソニーの第1号機CDプレーヤー『CDP-101』の最大の特徴は、水平にローディングされるトレイ型のCDプレーヤーであったことだと思います。

SONY CDP-101の写真
世界初のCDプレーヤー第1号機

ソニーが、1981年のオーディオフェアで公開したデジタル・オーディオ・ディスクの試作機、ニックネーム『ゴロンタ』は、ディスクを垂直に回して、ディスクが回る様子が見えるように設計されていましたが、市販の製品として開発された第1号機CDプレーヤー『CDP-101』は、トレイを利用した水平のCDを入れるタイプになっていました。

この『CDP-101』を見て一番驚いたのは、恐らく垂直型のCDプレーヤーを発表した同業他社の技術者たちだったのではないかと思います。

他社の多くの技術者たちは、1981年秋のオーディオフェアでソニーのCDプレーヤーの試作機の『ゴロンタ』のデザインを参考にして、新しく開発するCDプレーヤーの開発を進めていったからです。

『CDP-101』の発表会場で多くの人たちの中で、他社の多くの技術者たちは、『しまった!ソニーにやられた!』『あの方法は、俺も思いついていたんだ!』『水平なら内も3万円安く出来たのに!』との心の中で叫んでいたのではないかと思います。

『CDP-101』が、ミニコンポサイズでコンパクトだったことについては、他社の技術者たちは、当時のCDプレーヤーの販売価格を考えると、さほど気にすることはなかったのかなと思います。

また、ソニーと同じく水平のトレイ型のCDプレーヤー製品を開発を進めていた、ONKYOやヤマハは、『自社の考えは間違えではなかった!』と思ったことでしょう。

様々の技術者が『CDP-101』を見た思いが聞こえてくるようです。

『CDP-101』の音質は、どしっとした低音があるピラミッドバランスのサウンドで、安定感のある音でした。

後に登場した多くのCDプレーヤーに比べ解像度もレンジも狭いサウンドでしたが、ソニーの第1号機として登場した『CDP-101』には、当時の開発に大変苦労したソニーの技術者たちの想いが込められた逸品であることは誰も否定することはできないでしょう。

その意味から『CDP-101』は、歴史的なソニーのCDプレーヤー第1号機として、現在でも多くのオーディオファンに愛用されています。

『CDP-101』を発売を機にソニーは、名実共にCDプレーヤーのトップメーカーとして、揺るぎのない座を君臨する道を歩み始めます。

ディジタル録音開発時代の日本と現在

ディジタル音声記録の開発には、常に日本の技術がリードしていました。

多くの日本の企業が、ディジタルの開発に取り込まなければ、恐らく現在のようなディジタル録音が簡単にできる時代になるまでには、ずっと先になったことでしょう。

ディジタルオーディオの歴史は、日本企業の歴史といって良いほどディジタルオーディオ開発には、日本企業の技術が貢献しています。

かつての日本企業が、様々な努力を惜しまず自社開発の為に専念して様子が伺われます。

2000年ぐらいまでは、世界に誇れる多くの日本製品が登場してきました。

最近は、国、企業総出を上げてグローバル社会を目指すことが、日本の未来の雲行きを良くするように考えられ、政治、経団連等の指導で推進しています。

不思議なことにグローバルを推進すればするほど、国内で自社開発する企業は減り世界に日本がリードしていくような製品は少なくなっています。

日本企業のブランドの製品であっても、ほとんどが海外で生産されており、純国内生産の製品はほとんどありません。

また、日本ブランドの製品の設計・開発・まで海外の企業が行い、海外の自社の工場で生産することが普通になりつつあります。

現在の日本では、10万円もする高級ヘッドホンすら、国内生産ができなくなっている状況です。

かつて日本でビデオデッキやCDプレーヤーなどを開発していた時代には、考えられないことです。

また最近では、1000万以上するような日本のメーカーの高級スポーツカーまで、海外で設計・製造するようになっています。

このような傾向は、グローバル化が進んでいくことで普通になりつつあります。

日本に技術があるないとは別に、メーカーとしてプライドがないように感じられます。

グローバルと言うのは誇りやプライドまで捨て去り、海外に全てを差し出すことなのでしょうか。

ただお金を求めてグローバル化を推進し、プライドのない製品を大量に生み出すことが本当に日本企業にとって良いことなのだろうかと考えさせられます。

日本企業が、自社の製品にプライドをもって生産していかなければ、恐らく外国企業に日本企業が淘汰されていくのも、そんなに遠い未来ではないと思います。

現に、かつて優秀だった日本企業がグローバルを推進していった結果、多くの日本企業が海外企業の傘下に入ることになってしまいました。

このことは個人的にも言えることで、『最近は中国製の品質が良くなっている』や『ベトナム製の品質は素晴らしい』と感動することよりも、、『この製品以上の製品を国内で実現したい』や『自分ならこうする』というように考えていくことが重要だと思います。

他がどうであれ、『自身が納得できる品質の製品を必ず日本で実現してみたい』というような希望を持って生きていって欲しいものです。

希望とプライドがあれば夢は、必ず実現できると信じています。

                          おわり

                         



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