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DATテープ製造メーカーが陥った罠
以前に石鹸やシャンプーを製造している化学メーカーのK社が、ディジタルオーディオ(DAT)の記録テープの製造に参入してきました。
K社の開発したDATテープは、新しくオーディオメディア開発・製造に参入したのに関らず即存のメーカーをしのぐぐらい優秀なDATテープを販売していました。
このK社ですが、現在の企業では考えられないぐらい非常に真面目にディジタルオーディオテープの音を追求して研究・開発しています。
普通ディジタルオーディオテープは、記録密度や磁性体の状態などの耐久性などをチェックをするのがメインなるのですが、K社は最高級のスタジオモニタースピーカーを使用してテープの音質をチェックしてテープを開発していました。
その時に使用された最高級のスタジオモニタースピーカーは、レイオーディオの大型ダブルウーハーのバーチカルツイン型の最高級のホーンスピーカーだったと思います。
このバーチカルツイン型ホーンスピーカーは、スタジオモニターとしては能力は申し分なく、B&W 800とはキャラクターが違いますが優れた音質のスピーカーです。
レイオーディオのスタジオモニタースピーカーは、普通のオーディオファンでは高価すぎて、ほとんど購入するのが不可能なスピーカーです。
そのスピーカーを開発用のモニタースピーカーにしたK社のディジタルオーディオのメディアの参入に対しての真剣さを感じさせてくれます。
このレイオーディオのバーチカルツイン型ホーンスピーカーの特徴は、普通の家庭では絶対に味わうことのできない圧倒的な音圧のある音で再生します。
レイオーディオのバーチカルツイン型ホーンスピーカーは、プロのスタジオモニターで多くの実績をもつP社のプロ仕様ユニットを元に製作されているので、音質クオリティも申し分なく大変素晴らしい音のするスピーカーです。

K社は、これだけ凄いスタジオモニタースピーカーを使用して、DATテープの音質を判断して開発していました。
これだけ凄いスタジオモニタースピーカーを使用すれば、DATテープの音質を良し悪しを聞き分けれると考えると思います。
K社の技術者たちも、より鮮明にテープの音の差が聴き取れるモニタースピーカーとして、この最高級のモニタースピーカーを選んだことでしょう。
K社の技術者たちは、DATテープの開発のためにレイオーディオのモニタースピーカーで視聴を繰り返していくうちに、音の差は判断できるものの音の良し悪しに関しては判断が出来なくなってしまう現象が発生してしまいました。
なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか?
高級なモニタースピーカーなので、音の差については間違いなく判断できるのですが、、音の良し悪しになると判別が非常に難しくなってしまいます。
これは、モニタースピーカーの音自体がが個性的て音が良いということに原因があります。
レイオーディオのスタジオモニターは、B&W 800とサウンドキャラクターは全く異なりますが、B&W 800と同じく大変良い音がします。
バーチカルツインに配置されたウーハーかた出る低音は、大変音圧のある馬力のある強力な低音が再生され、ホーンスピーカーの特有の中高域の密度の高い音が再生されるので、再生音が大変良く感じれます。
またフロントにはバスレフポートが配置されていることで、低音がより補強されるので雄大な低音が再生されるのも特徴です。
このようなモニタースピーカー再生すると、オーディオ機器の弱点を吸収してレイオーディオのモニターの音にしてしまうので、オーディオ機器の音の良し悪しの判断を難しくしてしまいます。
普通のスピーカーで再生すると少し低音の不足を感じるオーディオアンプであっても、全く低音の不足を感じさせることはありません。
つまりどのようなオーディオ機器をつないでも、極端なバランスのオーディオや極端にSNが悪いオーディオ機器を繋がない限り良い音で再生されるということです。
良い音で再生されることはリスナーにとって良いことですが。オーディオ機器やメディアを製作するエンジニアにとって、細部の音の質感などの評価が難しくなってしまいます。
このような素晴らしい音がする個性のあるスピーカーで、音の繊細な部分の良し悪しを見極めることはたいへん難しい作業になり、常にスピーカーの個性を頭に入れながら作業を進める必要があります。
DATテープ製造メーカーk社の技術者たちは、良い音で再生されてしまうというスピーカーの罠に陥ってしまいテープの良し悪しの判断が出来なくなってしまったものだと思います。K社が陥った罠は、良い音のするモニタースピーカーでオーディオの調整や音決めをしている他のオーディオメーカーに全てに起こりうることだと思えます。
K社の経験は、良い音のするモニタースピーカーが、必ずしもオーディオ機器の調整には向いていないことの1つの事例になります。
もう1つの事例は、私のスピーカーの経験から事例になります。
私のスピーカーの経験から事例
私は、以前にD社のCD時代に対応して限りなくフラットレスポンスを目指した4ウェイスピーカーを使用していました。
その時オーディオ雑誌でS社の最高級プリメインアンプの音の評判が高く、好きなオーディオ評論家の評価も非常に高かったので購入することにしました。
自宅で早速、評判の高いS社のオーディオアンプを4ウェイスピーカーに繋いだところ、歌手のボーカルの声がプレゼンスがかかったように広がっているように聴こえました。 最高音の伸びが今ひとつ足りなく、低音は柔らかくなめらかで量感はあるのですが、音の分離が悪く全体に締りのない音のように思いました。
このS社のオーディオアンプは、暖かい音でリッチな感じのする音でしたが、全体に不自然な広がりがあり私の好きな音ではありませんでした。
このS社のオーディオアンプを購入したことは失敗したと思いながら、S社の他に所有していたD社の3ウェイスピーカーに繋いで見ることにしました。
すると驚いたことに、3ウェイスピーカーで再生すると4ウェイスピーカーで感じたような音の不満が全く感じられなくなりました。
3ウェイスピーカーは、音をより良くまとめてしまうことで、オーディオアンプの音の悪い部分を見えなくしているようです。
厳密に視聴していくと、3ウェイスピーカーでもオーディオアンプの音を判断できるのかもしれませんが、4ウェイスピーカーで視聴したときよりも遥かに音を判断することが難しいと思いました。

スピーカーのユニットを少なくすればするほど、音がまとまりバランスの良い音で再生されてしまうので、オーディオ機器の元の音の判断が難しくしてしまいます。
メインに使用していたD社の4ウェイスピーカーにS社のオーディオアンプで視聴するとオーディオアンプの音の荒が目立ってしまい、音楽を心から楽しめないと思うようになりました。
それからオーディオショップに行き、いろいろオーディオアンプを視聴した上でA社のオーディオアンプを購入することにしました。
以前からA社の高級オーディオアンプがあるのは知っており興味はもっていたのですが、、オーディオ雑誌のS社の評価が大変良かったという理由から、最初にS社のオーディオアンプをを購入してしまいました。 現在のようにオーディオに詳しくなかった時だったので、オーディオ雑誌の評価に素直に信じてS社のオーディオアンプを購入したのでした。
早速、新しく購入したA社のオーディオアンプをD社の4ウェイスピーカーに繋いで音を視聴してみることにしました。
第一印象は、その音の良さに驚かされました。
中高音が鮮やかで美しく低音が深く締まりある音で、全体にクッキリした音でした。
『これがシャープな音なのか!』
と本当に感動させられました。
オーディオアンプによってここまで音質が変わるものかと、思い知らされました。
一部のオーディオファンの中には、オーディオアンプの音は、どのアンプもほとんど変わらないという人がいますが、考えられないことです。
D社の4ウェイスピーカーは、オーディオアンプの音の悪い部分をはっきりと音にして表現しますが、良いオーディオアンプを使用すると素晴らしい音で再生されることが分かりました。
でもD社の4ウェイスピーカーは、解像度が高くオーディオ機器の音に大変シビアになってしまうので、良く出来たオーディオ機器以外は粗が目立ってしまいます。
D社の4ウェイスピーカーは、良質なオーディオ機器を使用すると最高のパフォーマンスをだしますが、良くない設計のオーディオ機器はその粗が大変目立ってしまいます。
オーディオアンプの選定を間違うとD社の4ウェイスピーカーの音は、たいへん悪く感じてしまうかもしれません。
その後、オーディオ雑誌に写っていた写真から高級オーディオアンプメーカーのA社は、オーディオアンプの最終の音の調整や音決めの1つに、私の所有のD社の4ウェイスピーカーが使用されていることが分かりました。
確かにA社が、最終の音を調整や音決めにD社の4ウェイスピーカーとV社の高級4ウェイスピーカーを使用していた時のA社のオーディオアンプは、音が優れていたように思います。
これらのことが、私がスピーカーから経験したことです。