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真空管アンプに半導体アンプの音を求めることは良いことだろうか。
良く出来た真空管アンプは、美しく上品な音質で大変リッチ感のあるサウンドを披露してくれます。
恐らく真空感アンプの魅力というのは、真空感アンプの美しく上品な音質で大変リッチ感のあるサウンドにこそあると考えられます。
一方、半導体アンプの音は、全体的にスッキリした感じのクッキリとしている音が特徴です。
半導体アンプの音の追求は難しく、業務用オーディオアンプでは、全体的にスッキリした感じのクッキリとしている音で良いのですが、一般のオーディオではそれだけでは物足りないと思います。
半導体アンプの高級オーディオアンプといわれる製品は、真空管アンプの良い部分を少しでも半導体アンプに取り入れたいように感じられます。
半導体アンプは、普通に再生周波数レンジが広く、出力も大きく、音のクオリティも良いのですが、何処かそっけない音にもなりかねません。
業務用のオーディオアンプであったら、半導体アンプのそっけない音でも問題ないのですが、高級オーディオアンプになると、それだけは物足りなく、様々な工夫がされています。
その工夫が、半導体アンプで真空管アンプのような温度が感じられるようた音になるように各オーディオメーカーが努力しているようです。
では真空管アンプに半導体アンプのような再生周波数レンジが広く、全体的にスッキリした感じのクッキリとしている音を目指して製作することが、本当に良いことであるか疑問です。
なぜなら真空管アンプの出力にはスピーカーとインピーダンスをマッチングさせるためにアウトプットトランスが必要になり、そのアウト・プット・トランスの性能が、真空管アンプの性能・音質に大きく左右すると言われています。
半導体アンプは、出力インピーダンスが低く直接出力できるので特性面で有利に製作できるのですが、真空管アンプのほぼ全てに特性的に不利なアウトプットトランスが必要になります。
真空管アンプの中にも半導体アンプと同じOTL(アウト・プット・トランスレス)真空管アンプが例外的に存在しますが、現在発売されている真空管アンプ全てにアウト・プット・トランスが付属していると考えても良いと思います。

この真空管のアウト・プット・トランスがある限り、トランスの性能に再生周波数特性の性能が支配されるので半導体アンプと同じような広い再生周波数レンジのアンプを製作するのは大変難しくなります。
真空管アンプでも半導体アンプまでいかなくても、広い再生周波数レンジまでフラットにする努力は必要だと思いますが、あまり半導体アンプのような音質を求めると、出力のない半導体アンプになりかねません。
真空管アンプで半導体アンプの特徴を求めると、苦労のわりに効果が得にくいように感じられます。
安価な真空管アンプキットの音の中には、真空管アンプの柔らかく滑らかで暖かい音がなく、音が薄っぺらいものがあります。
そのような真空管アンプを視聴すると、まず音質が良くないと思った後、良く音を観察していると真空管アンプの音とも半導体アンプの音ともいえないような特徴のない音に感じらられます。
真空管アンプの音の特徴がないような音が、本当に良いものだろうかと疑問になります。
真空管アンプには、無理をして半導体アンプの特徴を求めるのではなく、真空管アンプの音の魅力的な音質を求めるのが良いと思います。
しかし、真空管アンプだからナローレンジで暖かければ良いというような音は、私は好きにはなれません。
そのような音を真空管アンプの個性と一言で解決することは出来ません。
真空管アンプといえども、半導体アンプの特徴までいかなくても、再生周波数レンジを広げたり、歯切れの良い低音になるように少しでも努力することが重要だと思います。
真空管アンプの音の良さを残しつつ、半導体の良い部分も取り入れることがオーディオの王道だと考えることができます。
最近での真空管アンプは、個人が趣味としてあるいはそれ以上のものを研究がなされるようになりました。
真空管の差動増幅回路、超三極接続、OTLアンプなど個人が設計、製作した真空管アンプが真空管オーディオの発展に貢献していることは計り知れません。
決して従来の真空管アンプのレトロな音をいうものに甘えず、良い音への追求が真空管アンプが再び現在に高い評価されるオーディオ機器として君臨できるようになることでしょう。
OTL真空管アンプについて
真空管アンプでOTL(アウト・プット・トランスレス)真空管アンプというものが存在します。
このOTL真空管アンプというのは、アウト・プット・トランスレスという真空管アンプで半導体アンプと同様にアウト・プット・トランスがない真空管アンプのことです。
OTL真空管アンプは、真空管増幅の裸の特性を出力することができるので真空管の真の音が聴けるというメリットがあります。
オーディオ真空管アンプとしてOTL真空管アンプは、非常に魅力的な方式ですが、特性がそろった真空管を何本も用意しなければならないなど、設計どうりの理想の性能のアンプを製作することが大変難しいアンプです。
OTLアンプに適した真空管が少なく、真空管自体が特性が揃ったものはほとんどない上に、、その上、一部の真空管以外は製造されていなく、今後も新しく製造される期待も薄く、OTLアンプの製作は、非常に苦悩を強いられることは間違いありません。
youtubeなどで上がっているOTLアンプを視聴しても、音質的に完成したるものは現時点では見かけません。
たいへん難しく実現が難しいOTL真空管アンプの音求めて、製作に従事しているオーディオファンの努力には、頭があがりません。

いつか、理想のOTL真空管アンプを実現して世間に披露していただきたいものです。
完成されたOTL真空管アンプの音を視聴できることを望んでいます。