File No.21-10 タイムドメイン・スピーカーについて(10)  -スピーカー-

タイムドメインス・スピーカーに勝負を挑む

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タイムドメインス・スピーカーに勝負を挑む

私は、タイムドメイン・スピーカーが主張するようなスピーカーのコーン紙から放射された音だけを再現することは不可能だと考えてます。

またエンクロージャーの振動を絶対的に悪いものだとも考えていなく、逆にエンクロージャーの振動によるある程度のキャラクターを認め、それを利用してスピーカーを設計していく方が良いと考えています。 しかし、柔らかい木材を使用してエンクロージャーの振動を積極的に利用するスピーカーは好みではありません。 硬い木材を利用して極力不要な振動を抑えたエンクロージャーが、最も良いと考えています。

インパルス特性を求めるゆえに小口径フルレンジ・スピーカーユニットに拘るよりも、フルレンジ・スピーカーの音のバランス考えると適度な口径がある方が再生音には良いと思っています。

ここで

 

『タイムドメインス・スピーカーに勝負を挑みたい』

 

と思います。

まず、16cmのフルレンジ・スピーカーユニットを用意します。 16cmのスピーカーユニットは、名器といわれるD社のロクハンといわれるものが理想かもしれません。

エンクロージャーは、JIS箱というものでスピーカーの国際規格の箱で間口 94 cm,高さ 124 cm,奥行 64 cm,容積約 600 l の密閉箱に16cmのフルレンジスピーカーをマウントします。

なぜこのような巨大な箱に16cmのフルレンジマウントしようと考えたのは、タイムドメイン理論のスピーカーとあえて逆のことをしたいと考えたからです。 密閉箱を選んだ理由は、バスレフ型の箱に比べ音に癖が少ない理由からです。

大きな箱にフルレンジ・スピーカーユニットをマウントすると、エンクロージャーの影響を間違いなく受けることになります。

JIS箱にフルレンジユニットをマウントする画像
フルレンジ・ユニットとJIS箱
  

私の考えるスピーカーは、逆にこのエンクロージャーの影響を最大に利用したいと考えました。

このエンクロージャーは、箱なりを極力抑えるために硬く密度の高い木材の使用します。

エンクロージャーの素材は、必ず木材を使用します。 カリンやシベリア松、黒檀などの密度と重量がある木が理想と思いますが、現在では天然木材の利用が難しいので、合板やMDFで妥協することになると思います。 合板でもなるべく密度がある硬いものを選ぶのが良いです。

私が、スピカーのエンクロージャーに木材を使用することには理由があります。 これまでいろいろな素材のエンクロージャーのスピーカーを視聴してきましたが、コンクリートやFRPなどのプラスチック系、アルミニウムなどの金属を使用したスピーカーの響きは、どこか冷たく素っ気ないように思います。

スピーカーのエンクロージャーは、キャラクターがつかない方が良いのは間違いないことだと思いますが、どのようなものを使用しても固有のキャラクターが付きます。

スピーカーのエンクロージャーに金属のような響きの悪い素材を使用すると、その音が嫌なキャラクターとして残ってしまいます。 スピーカーのエンクロージャーは、硬い素材の木材で響きの良い物を使用した方が、音の響きが良く嫌なキャラクターつかなく音が自然に減衰していくので良いと考えています。

特にピアノ曲などを聴けば、音の響きの良さや音が減衰していく感じの自然さの違いが良く解ると思います。

フロントバッフルのラウンドにして厚みは4cmがあると強度的に理想ですが、その場合はフルレンジユニットを深い穴に固定することになるので、穴の後ろの部分テーパーをかける方が良いでしょう。 とにかくエンクロージャーの強度を強くしてガチガチに固めた方が良く、吸音材は少し多めに入れたほうが良いでしょう。

さすがにここまで贅沢な箱のフルレンジスピーカーは、市販の製品では存在しません。 タイムドメイン理論に相反す方法のスピーカーは、そんなに音が濁って悪いものかを知って欲しいと思い考えました。 モデル化したものは、何の変哲もない昔のタイプのスピーカーです。

このスピーカーでは、エンクロージャーの不要な響きを抑えつつも、エンクロージャーの美しい響きを利用しています。 大きな密閉箱にマウントしたフルレンジは、癖のない非常に素直な音が楽しめます。

このような贅沢なスピーカーで音を聴くとユニット1つのフルレンジ・スピーカーがこんなに音が良いのかと驚かれると思います。

このスピーカーとタイムドメイン・スピーカーを並べて勝負を挑んでみたいものです。

このようなスピーカーの音とタイムドメイン・スピーカーの音を聴き比べることができれば、タイムドメイン・スピーカーというものが何であるか?良く理解できると思います。

もし、十分な視聴スペースがありスピーカー1本30万円以上スピーカーに費やせるなら、 オーダーメイドでスピカーを製作する会社があるので、高級木材のカリンなどを使用して、美しいオイルフィニッシュのボックスを製作してもらうと良いと思います。

贅沢なフルレンジ・スピーカーの音が、どれぐらいすばらしい音が出るのか肌で体験できると思います。 理論やアイデア以上に物量的に贅沢なスピーカーが、どれぐらいすばらしいものか音を奏でるか理解できます。

そのときタイムドメイン・スピーカーについて、どう考えるかが楽しみです。

しかしスピーカーにそこまで贅沢できるオーディオファンは、恐らく他の優秀な贅沢なスピーカーを選ぶだろうと思いますが・・・・・

私がタイムドメイン・スピーカーに勝負を挑むことを考えたのは、スピーカーにはタイムドメイン以外の考え方があるということを理解して欲しかったからです。 確かにタイムドメイン・スピーカーの考えや良さは認めますが、その全く逆の方法のスピーカーの音が、決して悪いものではないということを知って欲しいと思ったからです。

オーディオにはアイデア、様々な考えが存在し、各自が理想を求めて研究し実現していくのが理想だと思います。 各自の様々なオーディオ考えに良いところは良いと素直に認め、良くないところは改善していくことこそが重要です。

オーディオファンには、タイムドメイン・スピーカーだけを良さを認めるのではなくて、他の考えのスピーカーの良さも見つめてほしいと思います。

フルレンジ・スピーカー

タイムドメイン・スピーカーを考える前に、フルレンジ・スピーカーというものを考える必要があります。

フルレンジ・スピーカーとは、1つのスピーカーユニットを使用して全帯域を再生させるスピーカーのこといいます。 フルレンジ・スピーカーを使用して音の再生することは、タイムドメイン・スピーカーでも同じです。

フルレンジ・スピーカーは、1つのユニットから音が放射されるので位相特性がよく音の定位が良いといわれています。 1つのユニットから音が放射されることは、ユニットが数個あるマルチウェイ・スピーカーのように各ユニットの音の時間軸がずれて再生されないので、インパルス応答性能が格段に良くなります。 この部分にタイムドメイン理論の要が存在するものだと思います。

よく出来たフルレンジ・スピーカーは、自然なバランスの良い音が楽しめ、すばらしい音質を味わうことができます。 このようなフルレンジ・スピーカーの自然なバランスの良い音が、現在でもフルレンジ・スピーカーがオーディオファンに支持され続ける理由だと思います。

フルレンジ・スピーカーであれば、どのような製品でも良いわけでなく、1つのスピーカーユニットで全ての帯域を再生させる必要があるので、単体ユニットの性能そのものが大変重要になります。 また単体ユニットの性能だけでなく、フルレンジ・スピーカーはキャビネット(エンクロージャー)は、良い音で再生するためのたいへん重要でが、まずは単体ユニットの性能が最も大事な要素といえるでしょう。

このフルレンジ・スピーカーは、1つの音源から全帯域を再生させるので理想的な再生方法なのですが、1つのユニットだけでは全帯域を均一に再生することはできません。 フルレンジ・スピーカーは、最低音と最高音の周波数特性にある程度妥協が必要になってきます。

そのためにフルレンジ・スピーカーは、人が最も音を感じることができる中高音からの音の周波数特性のバランスを取ることが最も重要です。

単体のフルレンジ・スピーカーユニットを考えるときは、バランスの良い周波数特性の音を考えなければならないので、スピーカーの口径が選定がたいへん重要になってきます。 これは、音の良いコーン紙を選ぶ以上に重要です。

フルレンジ・ユニットの特徴は、口径が小さくなると高音域が良くでて、低音がでにくくなりハイ上がりな音になり、逆に口径が大きくなると低音が良く出るようになり高音が抑えられてハイ下がりな音になってしまいます。

フルレンジ・ユニットの口径が大きすぎても、小さすぎても音バランスを崩してしまいまい不自然な音になるという欠点があります。

結果的にフルレンジ・スピーカーでバランスの良い音を再現するには、適度なスピーカーユニットの口径が必要になります。

フルレンジ・ユニットの特徴の説明する画像
フルレンジ・ユニットの特徴
     

タイムドメイン・スピーカーの考えは、小さな口径のスピーカーユニットを使用することで、コーン紙の質量を下げることでインパルス応答特性の良い反応の速い軽快な音を再現できるとしています。 しかし、フルレンジユニットの特性上、口径を小さくすれば中高域の反応の良い音が再生される反面に必ず低音が不足してしまうことが生じます。 この部分についてタイムドメイン理論では、小口径であっても振動板の後面からの圧力波がスムーズに流れるようにしているので最低共振周波数が下がると説明しています。 これは、背面開放型やバスレフ、共鳴管スピーカーでは後ろからの空気の圧力(バネ)が 発生しないので、コーン紙の動きがスムーズになり低音特性が良くなるということをいっているものだと思います。

このように小口径で低音の最低共振周波数が下がるのであれば理想的に思われますが、その最低共振周波数が下がる程度が重要になります。

タイムドメインに使用されている5.5cmのフルレンジユニットで16cmのフルレンジユニット以上に最低共振周波数が下がるのであれば、間違いなく素晴らしいことですが5.5cmのフルレンジユニットの最低共振周波数を僅かに下げる程度では、あまり低音拡大の効果を期待することができません。 タイムドメイン理論では、この部分について公表していないのでタイムドメイン・スピーカーの周波数特性はどのようになっているかわかりません。 実際のタイムドメイン・スピーカーを視聴した感じでは、やはり低音が不足しているように思いました。

この低音の不足の問題は、高級な卵型タイムドメインスピーカーに、別途でスーパーウーハーが用意されていることを考えると納得できるのではないかと思います。

タイムドメインスピーカーにスーパーウーハーという発想があることが、タイムドメイン理論そのものに矛盾を感じてなりません。 別途に低音を引き出すスーパーウーハーをタイムドメイン・スピーカーに追加することは タイムドメイン理論が成立しないと思います。

この部分は、私の独自考えになりますので読者自ら考えると良いと思います。

ところで、お話の方はフルレンジスピーカーにお戻しますが、フルレンジ・スピーカーユニットにはオーディオファンの中で名器といユニットがあります。 これらの名器といわれるフルレンジ・スピーカーユニットの多くは、ユニットの口径が16cmのものです。

これは、何を意味するもでしょうか?

昔のオーディオメーカーやオーディオファンが多数のフルレンジ・スピーカーに挑んだ結果、最終的に最もバランスが良い音のユニットのサイズが16cmだったものだと考えられます。

フルレンジスピーカーで最もバランスの良い音を再現するのは、スピーカー口径が16cmあたりで多少のの上下はありますが、口径が16cmのサイズから大きく外れることはなく、フルレンジ・ユニットのサイズからくる特性は、スピーカー構造や理論だけでは完全に解決することはできません。

タイムドメイン・スピーカーは、適度なフルレンジのサイズの16cmから大きく外れて5.5cmを理想としています。 5.5cmのフルレンジユニットでは、設計や構造にかかわらず低音域がの再生が不足が生じるのは間違いないありません。

タイムドメイン・スピーカーの低音域が不足は、小さな音で視聴している時はあまり気づくことはありませんが、大きな音で視聴すると顕著にでてきます。

もし、実物のタイムドメイン・スピーカー(卵型が最も分かりやすい)を視聴する機会があれば、実際の太鼓やドラムなどの音の大きさを頭に想像してから、音楽を実際の音の同じぐらいの音になるぐらいにボリュームを上げてもらうと良いでしょう。 その時、実際の太鼓やドラムのようなパワフル低音が再現できたならタイムドメイン・スピーカーは、低音を再生するのにフルレンジのユニットの口径は関係ないといえるので、タイムドメイン理論は完全に正しいということになり、私の解説していることはすべて誤りということになります。

タイムドメイン・スピーカーを求めるオーディオファンは、実際に一度上記の方法で視聴してみることをオススメ致します。

タイムドメイン・スピーカーの楽しみ方  つづく


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