File No.21-4 タイムドメイン・スピーカーについて(4)  -スピーカー-

タイムドメインというもの混乱させたもの

Home >loudspeaker >File No. 21-4

11 / 04
loudspeaker_tag
File No.21 / 04

タイムドメインというもの混乱させたもの

数あるタイムドメイン理論で製作されているというスピーカーは、スピーカーの性質的に異なる種類のものと考えられます。

 

①、筒状の物に上に向けたスピーカーユニットを筒にマウントしたもの』

 

②、スピーカーユニットを筒型のエンクロージャーに左右に配置したもの』

 

③、フルレンジユニットを卵型にエンクロージャーにマウントしたもの

 

④、タイムドメイン理論を考案した人が、かつてお勤めしていた会社で開発したスピーカー(GrandSepter GS-1)

①と②、③、④のタイプのタイムドメイン理論で製作されたといわれるスピーカー類は、スピーカーの分類として異なるタイプのものになります。

さまざまなタイムドメイン理論で製作されたスピーカーが性質の異なるスピーカーの為に、タイムドメイン理論というもの理解しにくくし混乱させてしまったものだと思います。

これらのスピーカーをタイムドメイン理論という1つのスピーカーの種類で分類してしまうことが、タイムドメイン・スピーカーの理解を難しくしていると考えられます。

タイムドメイン・スピーカーの分類する4つの画像
タイムドメイン・スピーカーの分類についての説明図面
  

タイムドメイン・スピーカーの分類

①と②のスピーカーは、完全な無指向性スピーカーとはいえませんが、壁や天井や床などに反射した間接音を視聴するスピーカーなので、音場型の無指向性スピーカーあるいは変形型の無指向性スピーカーになります。

③は、直接音を視聴するスピーカーですが、フルレンジユニットをフローティングしたりしてエンクロージャーの共振を抑えようとしているものの、ベースになっているフルレンジユニットになっています。 これは、フルレンジ・スピーカーの変形型といえます。

④は、これはタイムドメイン理論とは関係がないオールホーン型のスピーカーシステムです。 もし、タイムドメイン理論と共通するところを探すとしたら、タイムアライメントというスピーカーから放射されるユニットの時間軸をあわせる為に、ボイスコイルの位置を合わせているぐらいです。 このオールホーン・スピーカーの発売当時は、タイムドメイン理論に一切触れていないので、後になってタイムドメイン理論というものを付け足したものだと思います。

数あるタイプのタイムドメインスピーカーは、すべて性格が異なる種類の異なるスピーカーだと考えられます。

これが、タイムドメインとスピーカーを理解しがたいものにしていると思います。

タイムドメイン理論の不思議(疑問)

オーディオ・スピーカーは、1つの音源から音源に入っているすべての情報を再現できたら各ユニットの時間差や位相性能の問題が少なく理想です。

例えば1つのフルレンジユニットで、低音から高音まですべて再生することができて、音の大きさが表現できることが、オーディオ的には最もシンプルで理想的といえるでしょう。

つまりフルレンジスピーカーで、すべての条件をまかなえるなら、フルレンジスピーカーが理想のスピーカーになります。

しかし一般に販売されている多くのオーディオ用のスピーカーは、フルレンジスピーカーではありません。 なぜならばフルレンジスピーカーでは低音から高音まですべて再生して、音の強弱を再現することはたいへん難しいからです。

オーディオメーカーやスピーカー製作者は、好きで多数のユニット(マルチウェイスピーカー)に分けているのではありません。 フルレンジ・スピーカーでは高音から低音までのすべての音が再生できないので低音、中音、高音にユニット分けてすべての音が再生するようにしています。

もちろんスピーカーユニットを低音、中音、高音のユニットに分けることは、フルレンジ・スピーカーよりも複雑になるので、多くの問題が発生するのも事実です。

マルチウェイ・スピーカーでは、各スピーカーユニット音が分かれて出てくるので、インパルス応答性能の低下やネットワークによる位相ずれもフルレンジ・スピーカーよりも遥かに発生し問題を生じます。

多くのオーディオエンジニアたちは、マルチウェイ・スピーカーが音に多くの問題を抱えていることを理解した上で、さまざまな要因を指しい引いた結果にマルチウェイ・スピーカーを選んだものだと思います。

本質的なリアルな音の再現するには、1つのユニットで再生されるフルレンジ・スピーカーよりもマルチウェイ・スピーカーの方が良いと考え製作されていると考えられます。

インパルス応答

タイムドメイン理論は、忠実な音の再生に対して周波数特性以上にインパルス応答性能をたいへん重視しているようです。

このインパルス応答のスピーカー測定方法は、タイムドメイン理論の独自の方法ではなく、スピーカーの反応の良さ(音の立上り、立下り)位相の性能を調べるスピーカーの性能測定の1つとして古くから使用されていた方法です。

このインパルス応答の性能が良ければ、機敏な反応のスピード感のあるスピーカーできます。 特に減衰特性は、立ち上がった音が直ぐに減衰することが理想で、再生される音のにごりが少なくなる特徴があります。

インパルス応答性能が良い方が、間違いなくスピーカーの性能が良いといえます。 しかしスピーカーの再生は複雑で、あらゆるものが加わって統合的に良い音で再生されることになるので、インパルス応答の性能だけではスピーカーの一部分の性能を見ているに過ぎないと思います。

タイムドメイン理論の疑問

タイムドメイン理論の説明によるとタイムドメイン理論の根底には、インパルス応答の性能の良さが忠実な音を再現するということにあります。

このインパルス応答性能を良くするには、1つのスピーカーユニットで口径をできる限り小さくする方が有利でなので、タイムドメイン・スピーカーでは口径の小さなスピーカーユニットを1つ採用しています。

スピーカーユニットの小型化は、コーン紙やボイスコイルの重量を下げることができるので反応の良い音が期待できます。 しかしユニットの小型化は、スピーカーの能率を下がり大きな出力が取り出しにくくことになります。

カタログなので販売されているタイムドメイン・スピーカーの能率のところを見ると、スピーカーユニットを小型化することで能率の低下が見られます。

また、小型のスピーカーユニットはコーン紙に対してエッジの重量の比率が大きくなるので、その影響も無視できなくなり、スピーカーユニットを小型化にすると、必ず有利な部分と不利になる部分が必ず発生します。

これは、自動車のエンジンでいうとピストンとの関係に似ていると思います。

自動車のエンジンのピストンを小さくすれば、ピストン往復運動を上げることができますが出力は取り出せなくなります。 逆にピストンを小さくすれば出力は大きくなりますがピストン往復運動は下がります。 もちろんピストンを小さくするにも限界があります。 これはスピーカーのユニットでも同じことがいえます。

自動車のピストンが大きくても小さくても一方的に性能をあげることは不可能で、スポーツカーを造るか?トラックを造るか?等により目的に合わせてバランスをとってやる必要があります。 また、使用素材の強度や質量、耐熱温度などの問題もあるので、それらを踏まえた総合的なバランスを考える必要があります。

タイムドメイン理論の展開は、

『1つの部分的な性能の向上が、その他の総合的な性能の部分は無視しても良い』

といっているように思います。

しかしタイムドメインにフルレンジ・ユニットを使用以上は必ず再生される音は、そのユニットの性能が重要になってきます。

タイムドメイン理論が、どのように優れていてもフルレンジ・ユニットを使用したスピーカーであれば、フルレンジスピーカーの特徴を持つのは間違いありません。

どんなにスピーカーの不要な固有音を防ぐためにフルレンジ・ユニットをフローティング構造に工夫しても、フルレンジ・ユニットの性質を引き継いでしまいます。

タイムドメイン理論が、『波動理論』という特別な存在であっても、フルレンジ・スピーカーの特徴は無視できません。

どちらにしても、タイムドメイン・スピーカーがフルレンジ・ユニットを使用している以上は、フルレンジ・ユニットの特徴を有するものだと考えられます。

結論!タイムドメインは、フルレンジ・スピーカー?  つづく


loudspeaker_tag
 
Site Search
全てのオーディオ・マスターファイルへ
▲このページのトップへ

Home >loudspeaker >File No. 21-4
s