File No.21 / 08
百聞は一聴にしかず
『百聞は一聴にしかず』は 『百聞は一見にしかず』ということわざをオーディオ的に改変したものです。
オーディオでは、どのように優れたオーディオ理論でも、その音を視聴しない限りは本質的なところは理解できないと思います。
これはタイムドメイン理論だけにいえることではなく、すべてのオーディオ理論にもいえることです。
どのようなオーディオの理論でも実際の音を聴かない限りは、その理論の優劣は判断は出来ません。
その理論の展開が自分にとって納得できる内容のものであっても、これは変わりません。
タイムドメイン理論がどのように優れていても、
『実際に再生した音を自分の耳で聴いて判断しなければならない』
と思います。
どのようなオーディオの考えも実際に聴かない限りは、最終的理解できないでしょう。
私はオーディオでタイムドメインスピーカーが話題になった時に『タイムドメイン理論』というものを初めて知りました。
そのとき自分自身のオーディオの経験の中では、
『この理論はありえない』
と正直思いました。
私のオーディオの経験上、『タイムドメイン理論』で主張している方法では、100%原音再生できるなど考えられなかったし、タイムドメイン・スピーカーにコーン型フルレンジ・ユニットを使用している限りは、それを超える音になるようなことは到底考えられないという理由でした。
しかし、
『もしかしたら自分自身のオーディオの考えが、大きく間違っている可能性もある』
と考え、実際のタイムドメイン・スピーカーを視聴することにしました。
視聴した結果、残念ながらタイムドメイン・スピーカーの音は、『タイムドメイン理論』の主張している100%原音再生できるスピーカーではないと思いました。
少なくとも私のオーディオの経験からは、タイムドメイン・スピーカーがオーディオで特別な優秀なスピーカーとも思えませんでした。
この考えは、現時点でも変わりありません。
タイムドメイン・スピーカーがユニークな発想のスピーカーであることは認めるものの、オーディオ雑誌やインターネットの評判で他のスピーカーでは得られないぐらいの高音質という評価は、全く理解することは出来ませんでした。
これがタイムドメイン・スピーカーに対する私の正直な感想です。
決してタイムドメイン・スピーカーの音を否定しているものではありません。
オーディオは、
『百聞は一聴にしかず』
なので、製作者やオーディオメーカーがどのようなすばらしい理論を展開していても、一度実際の製品を視聴して判断することをオススメいたします。
その結果、私のオーディオと考えが異なっても、それはそれで良いことだと思います。 また、それこそがオーディオの本当の楽しみ方ではないかと考えています。
日本オーディオメーカーにも罪がある
タイムドメインスピーカーがオーディオファンに評価され、語られ続ける理由は、 日本のオーディオメーカーが自社で開発して製造しなくなったことに原因があると考えられます。
現在のオーディオの状況では、タイムドメインスピーカーに対抗できる説得力のある小型スピーカーが少ないように感じます。
各日本のオーディオメーカーがかつてのように自社研究・生産してスピーカーを開発していたらタイムドメイン・スピーカーは、今までになかった存在などいわれずに小型スピーカーや無指向性のスピーカーの一部としての、良いアイデアのスピーカーぐらいとして扱われたに違いありません。
他のオーディオメーカーは、安易にタイムドメイン理論に乗っかるのではなくて、自社の研究と技術の粋を消費者にアピールしなければオーディオは決して良くはならないでしょう。
タイムドメイン・スピーカーというものが出現した時に、それに対抗できるものをスピーカーを持っていなかった日本のオーディオメーカーに罪はあると思います。
タイムドメイン・スピーカーが必要以上に評価された原因は、地道に自社で研究・開発をしてこなかった
『オーディオメーカーにも罪がある』
といえるのではないでしょうか?
良いオーディオを製作するには、オーディオメーカーが自社で研究・開発することが最も必要だと思います。