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ディジタルが、音楽を変えてしまったのかも知れない。
初期のディジタル録音は非常に高価でしたが、技術の進歩により現在では非常に安価にディジタル録音が可能になりました。
現在の音楽製作は、ホームユースでもできるくらいに安価になり、レコーディングと編集、高品位なエフェクトが可能なディジタル録音に移り変わってきています。 (実際の一流スタジオでのレコーディングは、多くのプロの音楽製作家等が関わるので、安価にはレコーディングは出来ませんが、録音の品質に対してのコストを考えると大幅に安価になったと言わざるえません。)
かつてのアナログレコーディングでは、アナログテープが非常に高価だったので、よほどのアーティストでない限り、簡単にはレコーディングすることが出来ませんでしたが、ディジタル録音では、誰でも簡単にレコーディングが可能になりました。
安価の音楽製作は、アーティストの量産に繋がり、アーティストの使い捨てのショービジネスを産み出す結果になりました。
アーティストに人気のある時には異常なぐらいの数のアルバムをリリースさせて、人気がかげりだすと契約を解除して自由契約にするというビジネスが横行するようになってきています。
特にビジュアル系などいわれる音楽ジャンルは、売れるときに音楽CD以外に様々なアイテムを売り出し、大きなお金を稼ぐのが主流となっています。
お金を稼ぐのが目的のアーティストも多く、恐らく自身の製作する芸術作品に拘りがなく、見た目の良さやビジュアルを重視しているのだと思います。
もしかするとアーティストの本人は、自身の人気に溺れれて、本当に自身の音楽の芸術性を真剣に信じているのかも知れませんが・・。
アーティストの音楽に芸術性があるかないかは、10年もすれば結果が出ているでしょう。
流行らなくなったアーティストの音楽作品でも、もう一度聴きたくなったり、周りの友人などが全く聴かなくなっても、自身だけは聴いて楽しんでいるかで、本物か流行の偽物であったかを理解出来るでしょう。
かつて国内で絶大な人気のあった女装系のヴィジュアル系バンドは、短期間の多くのアルバムをリリースしていましたが、現在は全く音楽活動をしている感じもありません。
中古CDショップに行くと、そのバンドのCDは、5枚ぐらいを100円で叩き売られていたりしていましたが、現在は見かけることもなくなり、売れないし場所もとるので中古CDショップが各自に廃棄処分しているのだと思います。
また、歌手だった人が音楽活動をせずに政治家へと転身したりするのも、もともと音楽にはそんなに興味がなく、ただ人気ビジネスとお金儲けの道具くらいしか考えてなかったのでしょう。
ファンにとっては、売れているときに楽しませてくれたことだけでも十分かも知れませんが、音楽を愛する人にとっては、そのような状況を見ると少し寂しい感じがしてなりません。
音楽製作にディジタル録音というものが登場して、音楽製作が安価になったことで、多くのアーティストが作品を制作することが可能になりましたが、安価な音楽の製作は、アーティストの大量に輩出を生み出し、アーティストの質よりも量産に向かわせるようになったと思います。
ショービジネスというものが成熟して、芸術性よりもお金を大切に感じるアーティストも、増えてきたこともアーティストの大量に輩出の原因の一つかも知れません。
新しいディジタルという安価な音楽製作がで可能になったことと、利益を第一に求めるショービジネスへの考えが、質よりも量産で利益を獲得するようになってきたのだと思います。
現在のショービジネスでは芸術に拘る気難しいアーティストを丁寧に長く育てていくよりも、短期的に大金を稼ぎだすショービジネスの操り人形のようなアーティストを求めるようになってきているように感じられます。
皮肉にも、これまで大変高価だった音楽製作をディジタル技術の進歩により、低価格で高品質で音楽製作と編集が可能なったことが、質より量に拍車をかけてしまったものだと思います。
そういうことからディジタルというものが、音楽そのものを変えてしまったといえるかも知れません。

オーディオにとって優れたディジタル技術が登場したことにより、音楽製作が低コストで出来るようになった結果、音楽そのものを変えてしまったのかも知れません。
ディジタル技術の発展によって、音楽が、質より量に向かうのであれば残念です。
おわり