File No.73 / 05
便利さを求めれば求めるほど楽しさは少なくなる
人は便利さを求めて生きる生物です。
これまで人類は、様々なことに便利さや簡単さを求めてきた歴史があり、これは原始時代から求めていた人間の要求ともいえます。
ディジタル・オーディオは、アナログ・オーディオとは異なり、ディジタルの特徴から、簡単・便利あるいは自動化へと進化・発展が進みやすい特徴を持っています。
ディジタル・オーディオとして最初にCDが登場した時は、動作的にはアナログ・オーディオと変わりはありませんでしたが、進化と発展を繰り返すことで、より簡単に便利になってきました。
特にデータ通信技術の発展により現在ではいつ何処でも、音楽を楽しむことが可能となっています。
これらは、CDが登場した時代には考えられないぐらいの進化と発展したといえるでしょう。
ディジタルは、より簡単、スピーディに、よりコンパクトに、より便利に進化していく運命のように感じられます。
今後も、ディジタルという技術の特徴を利用して、より簡単且つ便利になるように求めていくことは間違いないことでしょう。
オーディオにディジタル・オーディオが登場してから、アナログ・オーディオの発展した経過とは大きく異なり、CDが登場した当時から細かいことを除けばスペック的には既にクリアーしており音質についても、かなり高いレベルを達成していました。
確かにCDが登場した当時では、CDプレーヤーの性能等により、ディジタルの音質の問題もありましたが、現在のディジタルの音質がかなり高い水準に出来上がっていることは周知の事実です。
ディジタルによって、アナログの時代に比べて高い音質を得るための苦労も少なく、いつでも何処でも常に簡単便利に高音質の音楽を楽しめるようになったので、普通であればアナログの時代よりも楽しさは倍増しているのではないかと考えられても良いと思います。
しかし、不思議なもので、簡単・便利さを求め、それらを得れれば得るほど、本来あった音楽の楽しさは少なくなって着ているように感じられます。
かつてのアナログ・オーディオでは、良い音で音楽を聴く為には大変な労力が必要でしたが、その様々な困難、労力を使って良い音で音楽を聴けるようになったときの感動、楽しさには格別のものがありました。
このような格別な楽しい感覚とは、好きなアーティストが製作した芸術作品に、自分自身が参加しているような感覚と言っても良いかも知れません。
ディジタルでは、アナログのときとは大きく異なり、良い音が簡単に手に入り、大変便利になっています。
また、便利さを求めるのはディジタルという特徴ともいえるもので、これはディジタルの大変素晴らしいことだと思いますが、ディジタルで便利さを求めれば求めるほど、音楽の楽しさは少なくなっていっているように思われます。
これは、音楽を聴くことに、便利さを求めれば求めるほど音楽を聴く行為そのものに楽しさを少なくしてしまうというジレンマに陥ってしまっているのかも知れません。