File No.76-3  スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(3) -ヘッドホン-

AKG K240 Studioの音質の問題点について解説しています。

Home >headphones >File No.76-3

011 / 03
headphones_tag
File No.76 / 03

AKG K240 Studioの音質の問題点

AKG K240 Studioの音の特徴は、中音域と低音域が少し張り出した感じの音によって、様々な音楽を上手くバランスされてまとめていく感じがあります。

AKG K240 Studioの現在の販売価格などを考えれば、AKG K240 Studioの音・音質のクオリティも良く、同価格帯のヘッドホンと比べても大変優秀なヘッドホンの一つだといえるでしょう。

しかし、このKG K240 Studioの中音域と低音域の一部が少し張り出した感じの音質が、AKG K240 Studioのヘッドホンの特有のキャラクターとなってしまっていることで、音楽ソースをAKG K240 Studioのキャラクターに染めてしまう感じがあります。

確かに、どのようなスタジオ・モニターヘッドホンでも、特有のキャラクターがありますが、AKG K240 Studioの中音域と低音域の一部が少し張り出しがあるのと低音の硬さの癖が、特にAKG K240 Studioのキャラクターの強さを感じさせます。

AKG K240 Studioの中音域の張り出し感が、ボーカルの歌声をハッキリとクリアーに再現されるので、歌声などは大変モニタリングしやすいのは良いのですが、ボーカルの声よりも上の高音の繊細な部分をモニタリングする時に、このAKG K240 Studioの中音域の張り出し感が少し邪魔をしてしまっているように思います。

スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(4)の写真
スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(4)の写真

AKG K240 Studioを使用して、ボーカル帯域よりも上の高音域を繊細にモニタリングしたいと思っても、どうしても中音域の張り出した部分に高音域の音が引っ張られて、高音域を繊細にモニタリングすることが難しく感じてしまいます。

そしてAKG K240 Studioの低音域の一部分が少し張りだした感じの音は、低音再生にのびのびさを失わせ少し低音が窮屈に聴こえてしまいます。

また、AKG K240 Studioにある低音の硬さは、音楽全体に重たさを感じさせてしまうのも気になります。 (ここでいう重たさというのは、重低音が出ているという意味ではありません。低音の硬さと張り出しが、低音を重たく感じさせ、音楽を軽やかに聴けない感じがするということです。)

AKG K240 Studioの中音域と低音域が少し張りだし感と低音の硬さが、様々な音楽をリスニングしやすいように味付けられていると思うのですが、それがAKG K240 Studioの良い意味での特有のキャラクターとなってしまっています。

様々な音楽をリスニングしやすいように味付けられているAKG K240 Studioのその良い意味での特有のキャラクター自体が、音楽全体を詳細にモニタリングするときに、どうしても気になります。

このAKG K240 Studioの特有のキャラクターである低音の張り出しと硬さが、AKG K240 Studioの低音の質感を若干損なわせてしまっているのが残念なところだと思います。

AKG K240 Studioをスタジオ・モニターヘッドホンとして考えた場合、非常に厳しい評価になりますが、AKG K240 Studioが持っている中音域と低音域の張り出しと低音の硬さのキャラクター自体が、音楽全体のバランスを詳細にモニタリングの時に邪魔してしまっていることが、AKG K240 Studioの最大の問題点であると思います。

より贅沢なことをいうと、音楽を長時間モニタリングするために使用することを考えると、決してAKG K240 Studioの音に質感がないとは言いませんが、AKG K240 Studioの音にもう少し音に質感があれば良いように思いました。

AKG K240 Studioの上位機種であるAKG K271MKII(中国製)あるいはメーカーは異なりますが、Sony MDR-CD900STにはスタジオ・モニターヘッドホンとしての性能とは別にして、長時間モニタリングに耐えるように高い次元で品位のある音質になるように繊細に調整されている感じがありました。

スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(5)の写真
AKG K240 Studio Sony MDR-CD900ST(中央)AKG K271MKII(右)

決してAKG K240 Studioの音に質感がないと言っているのではありません。

AKG K240 Studioをスタジオ・モニターヘッドホンとして、より高度に考えたときの音の品位を言っています。

AKG K240 Studioは、スタジオ・モニターヘッドホン及び音楽リスニングヘッドホンとしての品位は十分に確保されていると思いますが、AKG K271MKII(中国製)やSony MDR-CD900STの音の品位が高度であっただけに、そのことが余計に気になってしまいました。

しかし、AKG K240 Studioの上記の問題点については、私が実際にAKG K240 Studio(中国製)を使用して感じたことを掲載しているだけですので、万人が感じることではないかも知れません。

気になる方は、御自身で判断してください。

AKG K240 Studioの音のキャラクターについて、少し考えさせられたことですが、最近のダンス・ミュージックの流行から、あえてAKG K240 Studioの音のキャラクターを中音域の張り出しと低音を少し重めに味付けしている可能性も否定できません。

AKG K240 Studioを長時間エージングすることで、少しは上記の癖を改善できるかも知れませんが、過度の期待は禁物です。

基本的にエージングによって、AKG K240 Studioのキャラクターを大幅に変更することを期待するのは無理だと思います。

AKG K240 Studioの付属のケーブルを変えると、音の品位を少し向上させることができることを確認しましたが、基本的に音のキャラクターを完全に変えることはできませんでした。

スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(5)の写真
スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(5)の写真

AKG K240 Studioは、ハイレゾ音源に対応しているのか

AKG K240 Studioというスタジオ・モニターヘッドホンが登場した時代は、現在にように音楽にハイレゾ音源というものが存在しませんでした。

AKG K240 Studiの基本規格は、CDあるいはアナログ音声をモニタリングを最適にするように設計されたヘッドホンということになります。

そのAKG K240 Studioをハイレゾ音源に使用しても、音質的に良い結果が得られないのではないかと疑問を持つことだと思います。

オーディオに詳しい人なら、ここでの回答はおおよそ予想できるのではないか思います。

AKG K240 Studioの外箱パッケージの裏には、SACDのマークが印刷されているので、メーカーとしては一応ハイレゾ音源に対応のヘッドホンということになります。

AKG K240 Studioが登場した時代には、現在のようなSACDやハイレゾ音源のような音源がなかっただけに、100kHzまでの音の再生は考えられていませんでした。

SACDやハイレゾ音源がない時代のスタジオ標準のモニターヘッドホンが、現在のハイレゾ音源に対応しているのかが気になるところだと思います。

非常に音に拘るオーディオファンの中には、AKG K240 Studioではハイレゾ音源のモニタリングには向いていないという意見も聞かれます。

AKG K240 Studio(再生周波数 15~25,000Hz)よりも上位機種のAKG K271MKII(再生周波数 16~28,000Hz)は、再生周波数特性の高域限界再生周波数は高くなっています。

AKG K271MKIIの方が、ハイレゾ音源のモニタリングに向いているということなのでしょうか。

スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(1)の写真
スタジオヘッドホン AKG K271MKII(1)の写真

確かにオーディオは、再生周波数特性は広い方が。音楽をより高忠実に再生できるということで理想で良いのは間違いないことですが、人が聞き分けられられる音は、2~20,000Hzと言われています。

ではハイレゾ音源が音が良いと言われている理由は、20,000Hz以上の倍音成分が再生されることで、可聴領域の2~20,000Hzとの音の忠実度が上がり、音がよりリアルになると言うことでしょう。 (この見解は、理論的に理想オーディオであれば間違いなく正しい見解ですが、実際のオーディオ機器にはいろいろな問題があるので、ハイレゾ音源が最も音質が良いとは言えないのですが、ここでは話がややこしくなるので取り上げません。)

AKG K240 Studioの再生周波数は、15~25,000Hzになっており、ハイレゾ音源の再生上限の100kHzより大幅に低くなっていますが、可聴領域の上限の20,000Hzを十分クリアーしているのでハイレゾ音源再生に全く問題がないと言っても良いでしょう。

ヘッドホンの性能が、ハイレゾ音源に向いているか向いていないかどうかは、可聴領域以上の再生周波数の上限の倍音領域(スペック)を気にするよりも、実際の可聴領域の音、音質を気にした方が良いと思います。

そのようなことから、結論からいうとAKG K240 Studioは、十分ハイレゾ音源に対応しているヘッドホンだといえます。

そもそもハイレゾ音源対応などと言う言葉は、メーカーのセールス・キャッチフレーズだけであって、基本的にどのようなヘッドホンであっても、ハイレゾ音源を再生することは可能なのです。

つまり20~30年前のヘッドホンであっても、良く設計されたヘッドホンであれば、故障などの不都合さえなければ十分にハイレゾ音源を楽しむことができるということです。

ハイレゾ音源対応のヘッドホンで、音楽を再生して音が極端に変わるなら、むしろ設計自体に問題があり、音に癖があるものと言っても過言ではないでしょう。

スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(6)の写真
スタジオヘッドホン AKG K240 Studio(6)の写真

私の記憶が正しければ、昔のAKG K240 Studio(オーストリア製)の再生周波数(20~20,000Hz)ぐらいだったと思いますが、十分ハイレゾ音源に対応していると思います。

要は、ハイレゾ音源に対応できないヘッドホンというのは、ほとんど存在しないということを言いたかったということです。

良く設計されたヘッドホンは、時代を超えて良いものです。

これは、オーディオ・コンポーネントでも同じことが言えます。

良く設計されたオーディオ・コンポーネントであれば、30年以上前に設計された機器でも現役で十分にハイレゾ音源を再生する実力をもっているものです。

ハイレゾ音源に対応という能書きに拘るよりも、実際に再生される音・音質を重視することが最も大切なことではないかと思います。

AKG K240 Studioで残念に思うこと つづく


headphones_tag
 
Site Search
 
全てのオーディオ・マスターファイルへ
▲このページのトップへ

Home >headphones >File No.76-3