File No.76 / 06
旧AKG K240 Studio(オーストリア製)
初めて、AKGのK240 Studio(オーストリア製)の音を聞いたとき、Sony MDR-7506よりも、音が大変大人しく感じられたことに驚いたことです。
AKGのK240 Studio(オーストリア製)はSony MDR-7506より能率が低いので全体に音が小さくなるのですが、それ以上に大人しく落ち着いた音・音質というものに驚かされたのです。
これがヨーロッパのスタジオで標準に使用されている音なのか!という想いがあったのですが、このAKGのK240 Studio(オーストリア製)で、本当に音楽を正確にモニタリングできるのだろうか?とういう不安さえ感じさせるぐらい大人しく落ち着いた音・音質でした。
それぐらいAKGのK240 Studio(オーストリア製)は、音が大人しく少し引っ込んだ感じに聴こえたのです。
私は、AKGのK240 Studio(オーストリア製)より先にSony MDR-7506というプロフェッショナル・ヘッドホンというものを所有していたので、音楽をモニターにSony MDR-7506をメインで使用していました。
AKGのK240 Studioは、Sony MDR-7506と同じモニター用途のヘッドホンなのに、あまりにも音の出方が異なったことに戸惑った限りです。(私がこのAKGのK240 Studio(オーストリア製)を持っていたときは、スタジオ・モニターヘッドホンは、Sony MDR-7506しか持っていなく、現在、メインに使用しているSony MDR-CD900STは、まだ所有してませんでした。)
AKGのK240 Studioの全体に強調されるところがなく大変滑らかでバランスされている音は、大変優れているように感じたのですが、スタジオ・モニターヘッドホンとして、どうしても音の出方が、物足りなく感じられました。

Sony MDR-7506は、高解像で音の全体が鮮やかに再現されるように調整されているのとは対照的にAKGのK240 Studio(オーストリア製)は、音楽の全体を少し離れた場所からモニタリングする感じにバランスされているものの、何処か控えめで大人しい感じが否めません。
AKGのK240 Studio(オーストリア製)の音には、全く音楽を押し付けてくる感じがしなかったので、特に大変大人しく感じられたのかも知れません。
そのようなことから最初のうちは、このAKG K240 Studio(オーストリア製)が、何故、プロ仕様のスタジオ・モニターヘッドホンとして実績があるのか全く理解することが出来ませんでした。
しかし、AKG K240 Studio(オーストリア製)で、長く音楽を聴いていると、Sony MDR-7505よりも遥かに音は地味ですが、全体の音が高度に非常に滑らかにバランスされていることが分かりました。
Sony MDR-7506ように前面に音が押し出して来るようなバランスだけが、スタジオ・モニターヘッドホンでなく、AKG K240 Studioのように少し離れた場所から冷静にモニタリングするようにバランスされているスタジオ・モニターヘッドホンというものを理解することが出来ました。
AKG K240 Studioの全く音楽を押し付けてくる感じがない音に、Sony MDR-7506とは別の感覚で音・音質に高度さと品位を感じることができました。
この感覚は、私が今まで体験したことのない音の経験だったのです。
なるほどヨーロッパの人たちは、日本やアメリカとは音の感性が大きく異なり、AKG K240 Studioような大人しい音で音楽をモニタリングすることを好むのだなと思いました。
クラッシック音楽のモニタリングにはAKG K240 Studioが標準に使用されていると言われていたのは知っていたのですが、その理由が理解できました。
Sony MDR-7506のように前面に音が押し出して来るようなバランスでは、音楽を長時間モニタリングするにはきついかも知れません。
AKG K240 Studioの緻密にバランスした音は、決して派手ではありませんが、音楽を長時間モニタリングすることが出来るように設計されていることを感じとることができ、今まで私が考えていたスタジオ・モニターヘッドホンの音のイメージを180度ひっくり返しました。
世界にはスタジオ・モニターヘッドホン1つをとっても、様々な考えがあるのだということを知らされたのがAKG K240 Studioです。
このとき、AKG K240 Studioの音・音質以上に嬉しく思いました。
そして、AKG K240 Studioの音から、初めてヨーロッパの音響エンジニアたちのプライドと伝統を肌で感じさせられたことに本当に心から感動したものです。

スタジオ・モニターヘッドホン一つをとっても、様々な考えや思考、拘りがないと面白くありません。
私は、オーディオというのに本当に楽しく感じるのは、様々な人たちが、良い音を目指していろいろな考えを持って設計・開発しているからです。
AKG K240 Studio(オーストリア製)によって、心からオーディオの楽しさを感じることができ、オーディオの本当の楽しさを私に教えてくれました。
そのようなことからAKG K240 Studio(オーストリア製)は、私にとって大変思い入れの深いヘッドホンとして、今でも心の中に残っているのです。
AKG K240 Studio(オーストリア製)の音・音質の高度さや優秀さを実感するには、パソコン等に付いているフォーンジャックからではできません。
AKG K240 Studio(オーストリア製)の能率が低く、パソコン内部のアンプではAKG K240 Studioをドライブするには不十分だからです。
AKG K240 Studio(オーストリア製)をヘッドホンアンプかオーディオアンプのフォーンジャックに繋いだとき、AKG K240 Studio(オーストリア製)のモニタリングとしての音のバランスの良さ、音質のクオリティの良さを発揮することができ、AKG K240 Studioに秘めている真の実力を実感することができます。
また、現在販売されているAKG K240 Studio(中国製)よりも、AKG K240 Studio(オーストリア製)の方が、もっと能率が低かったと思います。
新AKG K240 Studio(中国製)と旧AKG K240 Studio(オーストリア製)の違いについて
昔に購入したAKG K240 Studio(オーストリア製)は、既に壊れて手元にないので、今回、実際に並べて比べることは出来ませんので、私の記憶から掲載しています。
あくまでも記憶からなので正確性を欠いている可能性がありますが、音質的な記憶は、ほぼ間違いないだろうと思います。
この新AKG K240 Studio(中国製)と旧AKG K240 Studio(オーストリア製)の違いについては、信憑性は自信の判断でお願いたします。
まず最初に新AKG K240 Studio(中国製)と旧AKG K240 Studio(オーストリア製)の違いを感じたのは、新AKG K240 Studio(中国製)は、旧AKG K240 Studio(オーストリア製)よりもコンパクトになっているように思いました。
旧AKG K240 Studio(オーストリア製)は、もっと横にでっぱった感じで、大きかったのではないかと記憶しています。
昔のAKG K240 Studio(オーストリア製)は、ケーブルが直付けされていたので交換することは出来ませんでした。
新しくAKG K240 Studio(中国製)を購入して、最初に音を視聴して驚いたことは、AKG K240 Studio(オーストリア製)の音とは違うように感じたことです。
昔に購入したAKG K240 Studio(オーストリア製)は、既に壊れて手元にないので、今回、実際に並べて音を比べることは出来ませんが、以前に購入したAKG K240 Studio(オーストリア製)の並行輸入品は、もっと能率が低く音が落ち着いた感じだったと記憶しています。
今回、新しく購入したAKG K240 Studio(中国製)の並行輸入品は、音に中音域と低音の張り出しが感じられ、少し低音が硬くタイトになっている気がしました。
現在のハイレゾ音源などに対応してAKG K240 Studio(中国製)は、新しく音が変更されているのかも知れません。
旧AKG K240 Studio(オーストリア製)は、私の記憶では、高音と低音のユニットが分かれた2Wayのドライバー・ユニットだったと思うのですが、AKG K240 Studio(中国製)ではフルレンジのドライバー・ユニットに変更されています。
この旧AKG K240 Studioのドライバー・ユニットが2Wayユニットだったことに関しては、あくまでも私の記憶からなので、間違って記憶しているかも知れませんので、ご了承お願いいたします。

AKG K240 Studio(中国製)の並行輸入品の音が、決して悪いというのではありません。
むしろ同価格帯のヘッドホンに比べるとAKG K240 Studio(中国製)は、他の重低音を重視したヘッドホンに比べても、ズバ抜けて音・音質は良い方だと思います。
勿論、スタジオ・モニターヘッドホンとしての性能も、十分に備えていることは間違いありません。
しかし、このAKG K240 Studio(中国製)は、かつて多くのエンジニアたちが使用した標準モニターヘッドホンのAKG K240 Studio(オーストリア製)とは音の品位が全く異なり、型番は同じでも全くの別の製品であると考えた方が良いかも知れません。
私が以前に所有していたAKG K240 Studio(オーストリア製)は、本当に音が大人しくバランスされており、当時、他に所有していた同じスタジオ・モニターヘッドホン用途として開発されているSony MDR-7506と音の出方の違いに大きく驚かされたものでした。
AKG K240 Studio(オーストリア製)は、今まで視聴したスタジオ・モニターヘッドホンの音とは明らかに違い、スタジオ・モニターヘッドホンとしての設計思想、音・音質に対しての考えが異なっているというのが、全く異次元の感覚でした。
これが、ヨーロッパの音響エンジニアたちが好む音・音質なのかと思いました。
全く異次元の感覚というのは、物凄く音が良かったという意味ではありません。
勿論、AKG K240 Studio(オーストリア製)の音・音質は素晴らしかったのですが、それ以上に気になったのは、高音から低音まで大変滑らかで、そして大変大人しい音の味付けの音だったことです。
これで本当にモニタリングできるのかという思いでした。
なぜなら、Sony MDR-900stやSony MDR-7506、または他のスタジオ・モニターヘッドホンといういわれるヘッドホンの音は、音質の差はあれ、どちらかというと高解像度で音を積極的に全面に押し出してくる感じの音にチューニングされています。
しかし、AKG K240 Studio(オーストリア製)は、全くと言って音を押し付けて来ないことに驚きを隠せませんでした。
ヨーロッパの音響エンジニアたちは、音楽を長時間モニタリングする為には、どのような音であれば最も良いだろうかということをAKG K240 Studioの音・音質を良く練って考えてたのです。
そのことをAKG K240 Studio(オーストリア製)を使用しているうちに、AKG K240 Studioの音からハッキリと感じられたのです。
AKG K240 Studio(オーストリア製)のスタジオ・モニターヘッドホンとしての、音の高度さを感じたとき、本当に感心させられたものです。
スタジオ・モニターヘッドホンについての考えが、アメリカや日本の音・音質の考えとヨーロッパの音・音質の考え方が、大きく異なることを知ったとき、逆に音楽という奥の深いものを感じることができたことに感動すら覚えた限りです。
スタジオ・モニターヘッドホンとして、AKG K240 Studio(オーストリア製)の大きな音の違いが、各音楽文化の考え方の違いを肌で感じることできて大変嬉く思いました。
昔に購入したAKG K240 Studio(オーストリア製)は、私の記憶からでは低音が硬くタイとでもなく、中高音の押し出しも、新しいAKG K240 Studio(中国製)よりも遥かに控えめだったように思います。
その控えめにバランスされた音質が、私にとって、あまりにもかけ離れたサウンドだったので、ヨーロッパ・サウンドを想像させるものでした。
新しいAKG K240 Studio(中国製)には、そのヨーロッパ・サウンドを想像させるものが全くといって良いほどありませんでした。
私にとって、新しいAKG K240 Studio(中国製)は、低価格でコストパフォーマンスの優れた音の良いヘッドホンというだけで、ただそれだけのことでしかありません。
現在は、昔のAKG K240 Studio(オーストリア製)と並べて比べることが出来ないので、私が言っていることを理解できる人は少ないかも知れません。
それでもAKG K240 Studio(オーストリア製)を愛用してきた多くの音響エンジニアの人たちには、私が言っていることを理解できるのではないでしょうか。
私は、新しいAKG K240 Studio(中国製)に設計や制作している人の主張や拘り、文化の違いを感じたかったのです。
AKG K240 Studio(オーストリア製)には、設計や制作している人の主張や拘りを感じることが出来ましたが、新しいAKG K240 Studio(中国製)には、設計や制作している人の主張や拘りが失われているように感じました。
非常に残念でしかありません。
私自身が、大変わがままで贅沢なことを言っているだけかも知れませんが、この感覚こそがオーディオであり、長い間、熱中させてやまない趣味の世界だと考えています。
今回の新しいAKG K240 Studio(中国製)というプロ仕様のスタジオ・モニターヘッドホンという優れた音質のヘッドホンが安価に購入できたことは良いのですが、以前にAKG K240 Studio(オーストリア製)を使用していた私自身の想いからすると新しいAKG K240 Studio(中国製)は、残念でしかありませんでした。
もう、新しいAKG K240 Studio(中国製)からでは、昔のような驚きと感動は、二度と経験できないのだと思いました。
これは、価格が価格なので仕方がないのかも知れません。
いろいろと新AKG K240 Studio(中国製)と旧AKG K240 Studio(オーストリア製)の違いについて掲載してきましたが、新AKG K240 Studio(中国製)は、音も良く、コストパフォーマンスも最高で大変良くできた優秀なヘッドホンであることは、間違いないということを繰り返し言っておきたいと思います。