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スタジオ・モニターヘッドホンについて
スタジオ・モニターヘッドホンは、日本ではSony MDR-CD900STが、最も有名であり日本のあらゆるスタジオに断トツで採用されております。
しかし、海外ではAKGのK240 Studio(現在は不明)、AKG K271MKIIなど、その他、SENNHEISERやKOSSなどのスタジオ・モニターヘッドホンが使用されているようです。
スタジオで使用されるヘッドホンは、ほとんどが限られたメーカーの型番のヘッドホンが採用されています。
なぜなら様々なヘッドホンを使用してしまうと音の基準が取り難く、アーティストや音響エンジニアたちとのやり取りやスムーズな意思疎通が難しくなるからです。
標準の同じ機種のスタジオ・モニターヘッドホンというのがあれば、アーティストと音響エンジニアや音響エンジニア同士での意思疎通が比較的スムーズになります。
各メーカーは、スタジオで利用しやすいように、スタジオ仕様のモニターヘッドホンを開発しています。
スタジオ仕様のモニターヘッドホンは、なるべく周波数特性に癖がなくフラットで音の声や各楽器の音の細部をモニタリングしやすいように高密度で且つ高解像度の仕様になっています。
スタジオ・モニターヘッドホンというのは大変保守的な世界であり、モニタリングの性能が優れたヘッドホンがスタジオの現場で採用される訳ではありません。
もちろん、現在多くのスタジオで採用されている実績のあるスタジオ・モニターヘッドホンの性能が優れていないということではありません。
現在多くのスタジオで採用されている実績のあるスタジオ・モニターヘッドホンの性能は、非常に優れていることは間違いないでしょう。
しかし、新規のヘッドホンメーカーが、スタジオ・モニターヘッドホンを製作しても、なかなかスタジオに採用されないのが現状だと思います。
よって、各メーカーからスタジオ・モニターヘッドホンという名前で、多くの音質や性能の優れたヘッドホンが発売されていますが、決った型番のヘッドホン以外は、実際のスタジオの現場ではほとんど採用されていないのが現状です。
それぐらいスタジオ機器というのは、ヘッドホンといえども保守的なもなのです。
しかし、音楽エンジニアの個人は自由なので、独自で自身の好むマイモニターヘッドホンを別に使用して作品を制作することは可能だと思いますが、最終的には制作作品をスタジオ標準のスタジオ・モニターヘッドホンで確認することは怠らないものだと思います。
何故、スタジオ・モニターヘッドホンが必要なのか?
音楽を仕事とするプロの現場では、音楽を詳細にモニタリングして調整していく必要があります。
それらの要件を満たすには、高解像度で全帯域をフラットに癖のない音でモニタリングできないといけません。
スタジオ・モニターヘッドホンは、高解像度で全帯域をフラットに癖のない音で音楽を長時間モニタリングできるようにプロの音響エンジニアが使用しやすいように設計されています。
たとえ高音質で性能が良くても、スタジオのラフな使用で直ぐに壊れてしまうようなものでは、プロの現場では使い物にならないので、一般のヘッドホンよりも頑丈にできているのがスタジオ・モニターヘッドホンというものです。
頑丈で高解像度で全帯域をフラットに癖のない音だけがスタジオ・モニターヘッドホンの条件ではなく、音楽という素材を長時間モニタリングしやすいように音質も緻密に調整されていなければなりません。
世界の多くの音響エンジニアたちに支持されているスタジオ・モニターヘッドホンというのは、頑丈で高解像度で全帯域をフラットに癖のない音で再生されるだけでなく、必ず再生される音・音質には品位のある質感を持っています。
スタジオ・モニターヘッドホンの音・音質に品位のある質感がなければ、長時間のモニタリングがストレスになってしまいます。
音楽のモニタリングにストレスを持ちながら音楽製作を進めると、良い仕事など出来るはずありません。
スタジオ・モニターヘッドホンは、頑丈で高解像度で全帯域をフラットに癖のない音で再生できて、なおかつ長時間のモニタリングしやすいように音・音質に品位のある質感のある高音質に仕上がってなければなりません。
優秀で知名度のあるスタジオ・モニターヘッドホンは、優れた特性だけでなく、必ず音・音質に品位のある質感のある高音質になっています。
もう一つ重要なことは、スタジオ・モニターヘッドホンは、スタジオ・モニターヘッドホンとしての優れた性能があるだけでなく、ある程度、共通の製品にする必要があると言うことです。
プロの現場では、音楽作品を制作する上で音楽アーティストと音響エンジニアと必ず意思疎通が必要になってきます。
そのためには、様々な種類のヘッドホンで音楽アーティストと音響エンジニアがやり取りをすると、音楽アーティストが求める音楽を音響エンジニアに正確に伝えることが出来なくなってしまいます。
音楽製作で意思疎通をスムーズにやり取りが出来るようにするためには、同じ機種(型番)のスタジオ・モニターヘッドホンを基準にする必要があるのです。
日本では、ほぼ全てのスタジオがSony MDR-900STが、スタジオ・モニターヘッドホンの基準になっており、海外ではAKG K240 Studioなどというようにスタジオ・モニターヘッドホンが基準になっています。 (海外のスタジオでは、アメリカとヨーロッパでは音楽への考え方が異なるのでAKG K240 Studioだけが基準というわけではありません。かつてはAKG K240 Studioが基準になっているスタジオが多かったのですが、最近は少し事情が変わってきているように思います。)

そのようなことから、長い間、スタジオで使用してきた実績のあるスタジオ・モニターヘッドホンを、音質や性能が良いと理由だけでは、簡単に他の機種に交換することが難しいのが理解できると思います。
スタジオ・モニターヘッドホンというヘッドホンが、多くのメーカーが生産しており、多くの種類が存在するにも関わらず、ほとんど何処のスタジオにも、昔から使用されてきた同じ機種しかないのは、同じ機種(型番)を長い間使用してきたことで音楽アーティストも音響エンジニアも、そのヘッドホンの音の癖などを完全に把握しているので、音楽製作がしやすいからです。
そのような理由からスタジオ・モニターヘッドホンは、なかなか新しい機種の採用がされずに保守的になってしまいます。
また、スタジオで過酷に使用されるスタジオ・モニターヘッドホンには、故障に対応して保守メンテナンス用の部品が豊富に揃っていおり、修理がしやすいように出来ているのも、 スタジオ・モニターヘッドホンの特徴だといえます。
音楽アーティストや音楽エンジニアたちが音楽製作の意思疎通をスムーズにやり取りがしやすい基準になる共通のヘッドホン、すなわち共通のスタジオ・モニターヘッドホンというのものが必要だということになります。
以上が、スタジオ・モニターヘッドホンが必要な理由です。
